妊婦の血液で胎児の染色体異常を調べる新型出生前診断(NIPT)の過半数が、美容クリニックなど日本医学会が認めていない医療機関で実施されている実態が明らかになりました。専門家の推計では、2020年時点で年間検査数3万6000件の半数が無認定施設によるものでしたが、2022年は無認定施設数が3割以上増えています。日本医学会の指針が認めていない精度が十分に検証されていない検査を受け、誤った結果を伝えられて中絶を考える人も出ています。
NIPTは2013年、日本医学会が認定した大学病院などで始まり、認定を受けない美容皮膚科医らも参入しています。関沢明彦・昭和大教授は日本産科婦人科学会の出産情報アプリを活用したアンケートをもとに、国内実施件数は年3万6000件で、その半数が無認定施設によると推計しました。
認定施設の研究者の調査では、無認定施設数は2020年の135から2022年は170に増えました。その無認定施設の検査数が伸びているとみられる一方、関係者によると、認定施設での検査件数はほぼ横ばいと推計されるため、無認定施設の検査数が認定施設を上回っていると考えられます。
検査対象について日本医学会は指針でダウン症など3項目に限っていますが、無認定施設の大半は、検査精度が不確かな項目も調べています。国立成育医療研究センターは2019~2021年、無認定施設で指針外項目が陽性となった妊婦3人に対し、精度の高い羊水検査を実施し、結果はいずれも異なっていました。横浜市立大学は同期間に同様の妊婦5人に羊水検査をし4人が異なる結果でした。
大阪府の女性は、胎児に先天的な病気が出る可能性がある指針外の項目で陽性となり、動揺して中絶を考えました。羊水検査で染色体異常の内容が異なり症状は出ないと判明し、生まれた子供に目立った病気はありません。
ほかの地域では、指針外項目で陽性となった妊婦が羊水検査を受けないまま中絶した例もありました。
国立成育医療研究センターの左合治彦副院長は、「生まれてくる割合が小さい病気に関しては、技術的に調べられたとしても、検査として広く提供することは誤りだ。正しく陽性と示せる確率が総じて低くなるためで、妊婦の不安をあおるだけだ」と指摘しています。
2022年7月19日(火)
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