摂取した食物成分や異物が凝固して硬くなり、胃から排出されない塊
胃石(いせき)とは、胃内異物の1つで、摂取した食物成分や異物が部分的に消化されたり、全く消化されなかったりして緊密に凝固して、石のように硬くなっ塊。
この胃石は直径10センチくらいにまでなることもあり、胃から排出されません。
胃は、胃石や異物が集まりやすい部位です。理由としては、胃の形が湾曲していること、胃の内容物が小腸の始まりの部分である十二指腸に入る際に必ず通る幽門と呼ばれる出口が狭いことなどが挙げられます。胃石や異物の直径が約2センチを超えると、ほとんどの場合は幽門を通過することができません。
胃石は内容により、果物や野菜や海草の繊維が集まった植物胃石、飲み込んだ髪の毛が部分的に消化された毛髪胃石、制酸薬などの薬が固まって塊状になった薬物胃石に分類されます。
植物胃石には、空腹時に果物の柿(かき)を大量に食べて生じる柿胃石、植物の一種であるコンフリー(ヒレハリソウ)を食べて生じるコンフリー胃石(いせき)があります。毛髪胃石は、自分の髪の毛を飲み込む癖のある人に生じるもので、ほとんどが女性にみられ、大抵は精神的なストレスなどで髪の毛をかんで飲み込むことにより、胃の中で凝固して胃石となります。
柿胃石は形成が速く健常な人の胃の中にも形成されますが、ほかの植物胃石は手術で胃を部分切除した人や糖尿病などで自律神経障害がある人など、胃の運動機能の低下や排出機能の障害がある場合に形成されやすくなります。
柿胃石の形成システムはいまだにはっきりしていませんが、柿渋の主成分であるシブオールというタンニンが胃酸により可溶性から不溶性に変化し、これが食物のかすと一緒に凝固してできるといわれています。柿胃石は、柿の栽培地域でしばしば流行します。
柿胃石は、吐き気、嘔吐(おうと)、上腹部痛などの急性症状を現し、上腹部に移動性のしこりを触れます。便や吐物(とぶつ)に胃石が混じることもあります。また、胃石によって胃粘膜が傷付き、びらんや潰瘍(かいよう)となることがあります。
柿胃石以外では、無症状、あるいは胃の不快感など軽度の症状で、慢性的です。まれには幽門閉塞(へいそく)の症状を引き起こす場合もあり、通常量の食事の後に非常に満腹感を覚えたり、悪心、吐き気、嘔吐、痛み、消化管出血が現れたりすることもあります。
胃石の検査と診断と治療
内科、消化器科、外科などの医師による診断では、柿を食べたことや、毛髪を飲み込む癖などを聞き出す問診を行った上、腹部単純X線(レントゲン)検査、腹部超音波(エコー)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、時に胃内視鏡検査に基づいて判断します。胃内視鏡検査の際、胃石を採取し、顕微鏡で調べて毛髪や植物性物質を探すこともあります。
内科、消化器科、外科などの医師による治療では、胃石は胃潰瘍(かいよう)や腸閉塞を合併することがあるので、胃石を溶解して縮小させる試みとして胃洗浄、炭酸水素ナトリウム剤、パパイン製剤、分解酵素剤などを使用します。
溶解療法が不成功に終わった場合と症状がみられる場合は、内視鏡を用いて鉗子(かんし)、ワイヤースネア、ジェットスプレー、レーザーなどで胃石を破砕し、小片として十二指腸より肛側へ排出させるか、内視鏡を介して回収します。
内視鏡下での胃石の排出や回収が不可能な岩石様の凝固物および毛髪胃石に対しては通常、開腹を要する外科的手術を行います。
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