運動障害や幻視も現れる認知症の一種
DLB(Dementia with Lewy Bodies、レビー小体型認知症)とは、脳の神経細胞が委縮する変性性認知症の一種。変性性の認知症の中では、アルツハイマー型認知症(AD:Alzheimer's Disease)に次いで多く、変性性認知症全体の約2割を占めるといわれるほど、比較的頻度の高い疾患です。以前は、DLBD(Diffuse Lewy Body Disease、びまん性レビー小体病)と呼ばれていました。
高齢者に多くみられますが、40歳前後で発病する場合もあり、男性は女性より約2倍多いと見なされています。出現する症状に物忘れもあり、一見アルツハイマー型認知症に似ています。
レビー小体とはもともと、運動障害を主な症状とするパーキンソン病において、脳の下のほうにある脳幹を構成する中脳に現れる特殊な構造物(封入体)を指す言葉ですが、DLBを発症した人の脳では、この構造物が認知機能をつかさどる大脳皮質にも広く見られることから命名されました。
DLBの認知機能障害は、アルツハイマー型認知症とは異なる特徴がみられます。
アルツハイマー型認知症では特に初期において、比較的近い時期の記憶をとどめておくのが難しくなる物忘れの症状で始まることが多いのですが、DLBでは、物忘れの症状ばかりではなく、初期より幻覚、特に幻視や、妄想が現れることがしばしばです。
幻視とは、実際には存在していないものがあるものとして生々しく見える症状で、「壁に虫がはっている」、「子供が枕元(まくらもと)に座っている」、「座敷で3人の子供たちが走り回っている」、「男たちがどかどか部屋に入り込んでくる」など、DLBでは非常にリアルな幻視が比較的よくみられます。
「布団が人の姿に見える」といった錯視の症状も、しばしばみられます。これらの視覚性の認知障害は、暗くなると現れやすくなります。
また、日によって症状に変動がある上、日内変動も激しいのが特徴です。日によって症状が良かったり、悪かったり、一日の中でも一見全く穏やかな状態から無気力、興奮、錯乱状態を示すといった気分や態度の変動を繰り返したり、日中に惰眠をむさぼったりすることも認められます。
もう一つの大きな特徴は、病態が進行すると運動機能障害を伴う点。体が硬くなる、動作が遅くなる、小またで歩く、体のバランスが悪くなる、手が不器用になる、手足が震える、猫背になるなど、パーキンソン病に似た運動障害が出てきます。
このパーキンソン病の症状が出現してくる時点で、アルツハイマー型認知症ではなくDLBと気付かれる場合が少なくありません。
運動機能障害を伴うため、アルツハイマー型認知症の人と比べて、転倒の危険が高く、また寝たきりにもなりやすいといえます。
自律神経の機能障害を伴う点も、DLBの特徴です。便秘、尿失禁、血圧の調節障害、性的機能障害がみられますが、最も日常生活を阻害するのは起立性低血圧です。立ち上がった時に、血圧の大幅な低下がみられるのが起立性低血圧の症状で、ひどい場合には失神を起こすことがあります。これが原因で、立位歩行が困難になることもあります。
DLB(レビー小体型認知症)の検査と診断と治療
DLB(レビー小体型認知症)の診断は難しく、初期の段階でアルツハイマー型認知症と診断されたり、運動機能障害が出現した段階でパーキンソン病と診断されたりするほか、初期の段階でうつ症状が出てうつ病と診断されることもあります。
早期発見と適切な治療が進行を遅らせて、症状を和らげ、中には見違えるほど元気になる人もいる疾患ですので、専門医に相談することが大切です。
医師による診断では、脳血流検査が行われます。アルツハイマー病に似た特徴である頭頂葉・側頭葉の血流低下に加え、視覚に関連の深い後頭葉にも血流低下がみられると、DLBの判定基準の一つとなります。
治療では、認知機能障害などの精神症状に対する抗精神薬によるコントロール、運動機能障害に対する抗パーキンソン病薬によるコントロール、自律神経障害に対する血圧コントロールなどが行われます。
薬剤調節が難しく、注意が必要な場合があるのが、DLBの治療における特徴です。抗精神薬への反応が過敏である場合もあり、少量より時間をかけて試みることが必要とされます。また、抗精神薬は運動症状を悪化させる作用があるものが多く、逆に抗パーキンソン病薬は精神症状を悪化させることがあるため、個々の発症者の生活や介護がしやすいように薬をうまく調節することが必要とされます。
アルツハイマー型認知症の治療薬が効果的な場合もあり、通常量以下での投与が試みられることもあります。
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