体幹や四肢など体中の末梢神経から発生する悪性腫瘍
悪性末梢神経鞘腫瘍(あくせいまっしょうしんけいしょうしゅよう)とは、体幹や四肢などを中心に体中あらゆる部位の末梢神経から発生する悪性腫瘍。
腫瘍が発生した部位に、しこりを触れることがあり、このしこりは時間経過とともに大きくなり、より腫瘍としてはっきりと認識されるようになります。また、腫瘍が神経を障害するために病変部位が痛んだり、しびれたりし、運動障害や感覚障害が生じたりすることもあります。高度の悪性腫瘍であり、しこりが5センチ以上の場合は生命予後が悪いとされています。
進行すると、病変が最初に発生した部位から、血液やリンパ液の流れに乗って肺や頭蓋内など他の臓器に移ることがあり、この現象を転移といいます。最も転移しやすい臓器は肺であり、大きくなってくると咳(せき)や呼吸困難、胸の痛み、血痰(けったん)などの症状が出現します。悪性度が高く、生命予後は悪化します。
この悪性末梢神経鞘腫瘍は、神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)と呼ばれる疾患に罹患していると、発症リスクが高くなります。その神経線維腫症1型は遺伝子異常により発症し、遺伝子異常を基盤として神経細胞が異常増殖を来すと、悪性末梢神経鞘腫瘍が生じることがあります。
また、悪性末梢神経鞘腫瘍は、こうした基礎疾患がない状況でも生じることがあります。
完全な発症原因は明らかにされていませんが、TP53と呼ばれる遺伝子異常を基盤として発症することも推定されています。そのほか、放射線の影響も考えられており、良性の神経鞘腫を放射線治療したことによって悪性化して生じることもあります。
悪性末梢神経鞘腫瘍は、30〜40歳代にかけて生じることが多いのですが、神経線維腫症1型が関係している場合はやや若い年齢層に生じます。
この疾患が疑われる時には、がんセンターや専門の大学病院での治療が必要です。
悪性末梢神経鞘腫瘍の検査と診断と治療
整形外科、神経内科の医師による診断では、病変部位における変化を詳細に評価するために、超音波(エコー)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、PETーCT検査といった画像検査を行います。
また、病理検査を行い、悪性末梢神経鞘腫瘍に特徴的な組織変化を観察します。病理検査とは、病変部位から組織を一部採取し、顕微鏡で詳細に観察する検査です。
神経線維腫症1型に罹患していると悪性末梢神経鞘腫瘍を発生することがあり、基本的には良性腫瘍のしこりが今までと違って急に大きくなってきた時は、悪性末梢神経鞘腫瘍を疑います。
整形外科、神経内科の医師による治療では、手術により腫瘍を完全に摘出することを第一の目標とします。病変の広がりに応じて、放射線療法や化学療法が選択されることもありますが、必ずしも効果は十分ではありません。
腫瘍を放置すると巨大になり、また肺などに転移しますので、手足を動かす神経の機能を犠牲にしても腫瘍を取り切り、予後が極めて不良となる再発を少なくするようにします。頭皮など浅い部分から表面に盛り上がっている腫瘍は完全に摘出できて治ることがあります。しかし、大きな腫瘍では周囲の軟部組織、神経組織を巻き込んで浸潤していますので、完全に摘出することは不可能となります。
悪性末梢神経鞘腫瘍の5年生存率はおよそ50%前後で、現在でも治療の難しい疾患の一つです。
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