まぶたの分泌腺に起こる肉芽性の炎症
霰粒腫(さんりゅうしゅ)とは、まぶたにできる、やや硬いできもの。まぶたの分泌腺(せん)で、特殊な皮脂を出す瞼板(けんばん)腺(マイボーム腺)が詰まって、その周囲に慢性の肉芽性炎症が起き、中にかゆ状の分泌物がたまったものです。
瞼板腺(マイボーム腺)は、まつ毛の生え際近くに開口部がある皮脂腺の一つで、油性物質の供給をつかさどっています。この油性物質は、目の涙液膜の蒸発を防ぎ、涙がほおにこぼれ落ちるのを防止し、閉じたまぶた内を気密にする働きを持っています。上まぶたに約50本、下まぶたに約25本存在します。
霰粒腫は、ものもらい(麦粒腫)と異なり、細菌感染を伴わない無菌性の炎症です。乳幼児から老人まで、あらゆる年齢層に発生します。
できものは小豆大ぐらいで、まぶたに触るとやや硬いコロコロした塊を感じます。まぶたを反転すると、その裏の結膜に小円形の偏平な隆起が見えます。まぶたがはれ、異物感が生じます。典型例では痛みや発赤はなく、皮膚との癒着もなく、目やにもあまり出ません。初期では、自然に吸収され、消失することがあります。
自然に消失しない場合に放置すると、しこりは徐々に大きくなり、まぶたが重苦しく、うっとうしくなります。まぶたの皮膚側や内側に破れて、内容物が出ることもあり、ゴロゴロしたり、不快な感じが続いたりします。内容物が出ても、ものもらいと違って、それで治り切ることはまずありません。
まれに、できものに細菌感染を併発して急性の炎症を起こすと、赤くはれたり、痛んだりして、ものもらいと似た症状を示すこともあります。
瞼板腺の詰まりにより、ドライアイが引き起こされたり、細菌のリパーゼによって詰まりが悪化することもあります。その結果、遊離脂肪酸が生成されるために目が刺激されて、点状表層角膜炎を引き起こすこともあります。また、乾燥した眼球がまぶたから皮膚の小さなかけらをこすり取り、眼瞼(がんけん)炎を引き起こすこともあります。
同じ個所に何度も繰り返して霰粒腫ができる時には、眼瞼がんが疑われることもありますので、中年以上の人にできる場合は注意が必要です。
霰粒腫の検査と診断と治療
霰粒腫では、まぶたのできものに気付いても、通常は痛くないので、眼科受診が遅れがちです。傾向としては徐々に大きくなっていくので、早めに眼科を受診しましょう。
症状と無痛性のできものの存在から、診断は比較的容易です。同じ個所に何度も繰り返して霰粒腫ができる時には、眼瞼がんの可能性が疑われることが時に存在しますので、病理検査を必ず行う必要があります。手術で摘出した組織を顕微鏡で調べることになります。
急性の炎症を起こした場合は、まず、細菌に有効な抗生物質が入った点眼液を用います。小さいものはステロイド剤(副じん皮質ホルモン)の局所注射などで消失することもありますが、大きくなると、まぶたの変形を起こすこともあり、根本的には切開手術をすることが必要です。
局所麻酔をし、まぶたの裏から小さな切開を加えて、霰粒腫を包んでいる袋ごと摘出します。小児の場合は、全身麻酔が必要になります。切開手術をしても、再発することもあります。
結膜やまぶたにアレルギーや結膜炎などの炎症性疾患がある場合などに、霰粒腫はできやすいものですが、原則的には、予防することはできません。
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