体中の皮膚に、大小さまざまな水膨れができる皮膚病
天疱瘡(てんぽうそう)とは、口の中のびらんで始まり、体中の皮膚に大小の水膨れ(水疱)ができる疾患。特定疾患(難病)の一つで、まれな疾患です。
水膨れはすぐに破れて、なかなか治りにくいびらん(ただれ)面となり、いつまでたっても、皮ができてきません。一見、正常そうに見える皮膚も、こすると簡単に破れてしまいます。もちろん、絆創膏(ばんそうこう)を張った部分では、絆創膏に皮膚がくっついて破れてしまいます。口の中にも、たくさんの水膨れとびらん面ができ、それが痛くて食事が取れなくなります。
原因はよくわかっていませんが、自己免疫疾患と考えられています。自分の体の中に、自分の皮膚の表皮細胞を攻撃する抗体ができるために、表皮細胞が破壊されて、水膨れができると見なされています。
同じ天疱瘡でも、皮膚の破れ方が少し異なる場合があり、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、増殖性天疱瘡、紅斑(こうはん)性天疱瘡の4型に分類されています。
尋常性天疱瘡は、大きなびらん面を作るタイプで、口の中、咽頭(いんとう)、外陰部などの粘膜も侵されることがほとんどです。天疱瘡のうちで最も多く、中高年によくみられます。
落葉状天疱瘡は、小さな水膨れができて、落ち葉のような落屑(らくせつ)になるタイプで、口の中などの粘膜は侵されないほうが多いとされています。普通、尋常性に比べて小さく乾きやすい水膨れが、体中にできます。
増殖性天疱瘡は、尋常性天疱瘡と同様の部分に同様の症状で始まるタイプですが、びらん面が次第に隆起してきます。表面は乳頭状で、しばしば小さな水膨れや小さなうみができます。
紅斑性天疱瘡は、顔の中心部にできる紅斑を特徴とするタイプで、体中にも小さな水膨れや紅斑ができます。落葉状天疱瘡に移行することがあり、そもそも落葉状天疱瘡の亜型であるともいわれます。
副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の登場により、天疱瘡の死亡率は90パーセントから劇的に改善されましたが、今でも死亡率は尋常性では5〜10パーセントあり、油断のできない疾患です。
天疱瘡の検査と診断と治療
何も治療しなければ高率で亡くなる疾患ですから、治りにくい水膨れが体にできた時には、皮膚科専門医に診てもらいます。
かつては、全身の皮膚がベロベロに赤むけになり、全身衰弱を起こし、予後はあまりよくなかったのですが、現在は、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の大量使用で、水膨れは抑えられるようになりました。しかし、副作用の心配があるため入院治療が必要で、薬をやめると再発します。
副腎皮質ホルモン剤でも快方に向かわない場合は、免疫抑制剤を使用したり、血漿(けっしょう)交換を行います。
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