心室中隔欠損などの疾患により、チアノーゼが現れる状態
アイゼンメンジャー症候群とは、心室中隔欠損などの疾患により肺高血圧症が高進し、静脈血が動脈側に流れ込み、チアノーゼが現れる状態。アイゼンメンゲル症候群とも呼ばれます
疾患名は、1897年に初めて報告したオーストリアのアイゼンメンジャー医師にちなんでいます。
肺動脈の血圧は、心臓の収縮と拡張に伴って変化しますが、収縮期血圧と呼ばれる最も高い血圧と、拡張期血圧と呼ばれる最も低い血圧、そして2つの平均である平均血圧で表されます。肺動脈の圧力は、カテーテルという細い管を肺動脈まで入れて測定したり、心エコー装置で体外から推定したりします。
肺動脈の平均血圧が25mmHg以上ある場合を、肺高血圧があると定義します。軽度の肺高血圧の人は、アイゼンメンジャー症候群に相当しません。また、肺動脈の圧力が高い状態でも、大量の動脈血が静脈側に流れ込んでいる状態は、アイゼンメンジャー症候群に相当しません。
アイゼンメンジャー症候群は、心室中隔欠損、心房中隔欠損、動脈管開存、大血管転位など、通常は動脈血が静脈側に流れ込む疾患を持つ人において、肺高血圧が次第に高度となって、静脈血の一部が動脈側に流れ込むようになって発症します。
発症すると、心室中隔欠損や動脈管開存がある場合には、肺動脈の収縮期血圧と呼ばれる最も高い血圧と、大動脈の収縮期血圧とはほぼ同じになります。
左心房と右心房、左心室と右心室を隔てる壁に欠損孔がある場合や、動脈管が開存して肺動脈と大動脈がつながっている場合に、心臓が収縮する時に、血圧が高い左心室内の血液の一部が血圧が低い右心室内へと流れ込むことになります。この血液は肺と左右両心室を空回りすることになるため、両心室の負担が増え、さらに肺血管の血流量増加のために肺高血圧症となります。
この症状が進行すると、右心室の負担をさらに強め、右心室圧が高くなり、右心室内から逆に左心室内へと血液が流れるようになり、全身に静脈血が送り出され、チアノーゼ(低酸素血症)となって皮膚や粘膜が紫色になります。
易疲労感、胸痛、失神、喀血(かっけつ)といった症状も現れます。脳塞栓(そくせん)、心内膜炎の兆候がみられることもあります。
アイゼンメンジャー症候群の検査と診断と治療
健康診断で通常行われる聴診所見、胸部X線検査、心電図といった検査で心室中隔欠損や動脈管開存、アイゼンメンジャー症候群などが疑われた場合、循環器を専門にしている医療機関で心臓超音波検査を受ければ確定診断がつきます。
循環器科、循環器内科などの医師による診断では、超音波検査だけでも判断は可能ですが、合併している心臓病の有無や、肺高血圧の程度を調べるために、心臓カテーテル検査が必要となる場合もあります。
循環器科、循環器内科などの医師による治療では、アイゼンメンジャー症候群と確定した時点で、心室中隔欠損や動脈管開存など原因である心疾患への手術適応がなくなり、肺動脈拡張剤の処方や、右心不全に対する塩分
制限や利尿剤の処方、在宅酸素療法など対症療法を中心に行います。原因である心疾患の手術は肺高血圧がさらに高進するためタブーであり、完治には心肺同時移植手術が必要となります。
アイゼンメンジャー症候群では、妊娠、出産はタブーとなります。
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