先天的もしくは後天的に、皮膚の表面に生じる青色調の平らなあざ
青あざとは、先天的もしくは後天的に、皮膚の表面の一部分に生じる青色調の平らなあざ。あざは、医学的には母斑(ぼはん)と呼ばれます。
この青あざは、皮膚のやや深い部分の真皮にメラニン色素を産生するメラノサイト(メラニン細胞、色素細胞)が増えるために起こり、発生する部位や症状により蒙古(もうこ)斑、伊藤母斑、青色母斑、太田母斑に分けられます。
蒙古斑は、新生児の尻や腰、背中の下部に現れる青い染み
蒙古斑は、生後1週から1カ月ころまでに、新生児の尻(しり)や腰、背中の下部に現れる青い染み。
胎生期に皮膚の深い部分の真皮に生じたメラノサイト(メラニン細胞、色素細胞)の残存と考えられています。通常は表皮にあって、皮膚の色を濃くするメラニン色素を作り出すメラノサイトが、表皮に出ていけずに真皮にとどまって増殖しているために、青い染みに見えてしまうのです。
日本人の新生児の9割にみられ、よく知られているあざの一種ですが、濃淡には個人差があります。多くは中心が濃くて、境界線付近は薄くはっきりしていません。境界線もはっきりして、ほくろ(黒子)のように濃い蒙古斑もあります。小さいとほくろのようですが、蒙古斑は隆起がないのが特徴です。
この蒙古斑は生後2歳ころまでには青色調が強くなり、その後は徐々に薄くなって、5、6歳までには、遅くとも10歳前後までには自然に消失し、さほど問題にはなりません。
まれに、尻などの通常の部位以外の手足や顔、腹部、背中の上部、胸などにも、青みを帯びた黒色調の蒙古斑が見られることがあります。これは異所性蒙古斑に相当し、通常の蒙古斑よりも消えにくい特徴があります。
といっても、異所性蒙古斑の大半は学童期までに消失することが多く、蒙古斑同様に治療の必要はありません。中には、青い染みが学童期になっても残る場合があります。しかし、その大半は成人期までに消えることが多く、放置しておいてもかまいません。
なかなか消えない異所性蒙古斑が衣服に隠れない露出部などに現れている場合は、子供が気にしてしまうケースもあり、外見的コンプレックスになることがあります。いくつかの側面から考えて、治療の対象にするべきか、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師と対処を考えることが勧められます。
なかなか消えない青いあざの中には、まれに異所性蒙古斑ではなく、青色母斑であることもあります。この青色母斑の中でも細胞増殖型と呼ばれるものは、幼少時に異所性蒙古斑と区別がつかないこともあり、悪性化することもあって治療法も異なるため、通常の部位以外にみられる青いあざは時々専門医の診察を受けることも必要でしょう。
伊藤母斑は、生まれ付きか乳児期に、肩や腕に発生する褐青色のあざ
伊藤母斑は、生まれ付きか乳児期に発症し、褐青色の母斑が肩や腕に認められる皮膚疾患。肩峰(けんぽう)三角筋部褐青色母斑、三角筋肩峰部褐青色母斑とも呼ばれます。
この伊藤母斑は、胎児期から多くは生後1カ月以内の乳幼児期に症状が現れ、男子より3倍多く女子に認められます。
原因は、メラノサイト(メラニン細胞、色素細胞)が深い部分の真皮に存在し、増殖しているために、皮膚が褐青色に見えてしまいます。
母斑は、後鎖骨上神経および外上腕皮神経の支配領域にみられ、肩の辺りを中心に鎖骨上部、肩甲骨部、上腕外側に、淡褐色の皮膚の上に濃青色から青みを帯びた小さな斑点がたくさん集まった状態で現れます。皮膚の表面は滑らかで、盛り上がったりしません。片側だけの肩や腕に出現することが多いものの、まれに両側の肩や腕にも出現することがあります。
通常、母斑は大きさや状態が変化せず持続して存在し、自然に消えることはありませんが、悪性化を心配することもありません。
本人が特に気にしなければ、治療の必要はありません。気にするようなら、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。
青色母斑は、通常のほくろよりも全体に青色が強いタイプのあざ
青色母斑は、青あざの一種で、通常のほくろよりも全体に青色が強く、青色から黒色調に見えるタイプのあざ。
この青色母斑の通常のものは、10ミリ以下で少しだけ皮膚から盛り上がっている小結節で、触ると硬い感触がします。
原因は、メラノサイト(メラニン細胞、色素細胞)が深い部分の真皮に存在し、増殖しているために、青色から黒色調に見えてしまうのです。
発生する個所としては、顔面、背中、手首、手の甲、足首、足の甲などが挙げられます。多くは乳幼児期に生じますが、30歳ころから生じるケースもあります。突然多く発生することはありません。
まれに、青色母斑がかなり大きくなることもあります。これは細胞増殖型青色母斑と呼ばれ、青年期以降に悪性化して悪性青色母斑となる可能性があります。悪性化した場合には、皮膚がんの一種で、メラノサイトががん化してできるメラノーマ(悪性黒色腫〔しゅ〕)と同様の治療を行う必要があります。
10ミリ以下の青色母斑の場合には、気にならなければ治療の必要はありません。ただ、目立つ部分に現れるので、気になってしまうようなら、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師に相談することが勧められます。悪性のものと区別がつかないケースもあるため、経過を見守ることも大切です。
太田母斑は、まぶたから額、頬にかけてできる褐青色の色素斑
太田母斑は、片側のまぶたから額、頬(ほお)にかけてできる、境界の不明瞭な褐青色の色素斑。眼上顎部(がんじょうがくぶ)褐青色母斑とも呼ばれます。
この太田母斑は、詩人や作家としてのペンネーム木下杢太郎(もくたろう)でも知られる皮膚科の医学者・太田正雄東大教授が、1939年(昭和14年)に初めて報告した疾患で、日本人など東洋人に比較的多くみられます。
通常は顔の片側に色素斑ができますが、両側にできる場合もあります。また、生後間もなく色素斑ができる早発型と、小児期や思春期に色素斑ができて徐々に拡大する遅発型の2種類があります。
さらに、色素斑は顔面の皮膚だけでなく、眼球結膜や口の粘膜、鼓膜にできることがあります。
色素斑は、三叉(さんさ)神経の第1・第2枝の支配領域にみられ、青みを帯びた色素斑の中に褐色調の小さな斑点が散在した状態で現れます。皮膚の表面は滑らかで、盛り上がったりしません。
原因は、メラノサイト(メラニン細胞、色素細胞)が深い部分の真皮に存在し、増殖しているために、皮膚が褐青色に見えてしまいます。
色素斑が拡大したり、色調が濃くなったりすることもあり、自然に消えることはありませんが、悪性化を心配することもありません。
本人が特に気にしなければ、太田母斑の治療の必要はありません。見た目が気になるようなら、カバーマークによる化粧で色を隠すのも選択肢の一つですが、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診し色素斑を除去することも勧められます。
青あざの検査と診断と治療
蒙古斑、異所性蒙古斑の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による蒙古斑、異所性蒙古斑の診断では、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、通常の蒙古斑の場合、ほとんどが自然に消えるのでそのまま経過をみます。異所性蒙古斑の場合は、悪性化の心配はほとんどないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザーにより、あざを除去します。
Qスイッチレーザーには、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。特定のレーザー光線を患部に照射すると、皮膚の中にあるメラニン色素に対してのみ反応するため、周辺の正常な皮膚組織へのダメージを極力抑えながら、あざの元になっているメラニン色素だけを破壊することができます。
いずれのレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行います。治療対象となる異所性蒙古斑の色が濃く、範囲が広い場合、1~2回程度のレーザー照射では終わらない場合もあります。
異所性蒙古斑の治療の難しさは、治療をすべきかどうか、その見極めにあるともいわれています。乳幼児に現れた大半は、成長とともに消えてしまう、あるいは薄くなるケースが多いことから、早い時期に治療を選択してしまうことで、かえって傷跡を残してしまう恐れがあるためです。また、手の甲に境界線のはっきりしない異所性蒙古斑ができた場合、レーザーを照射することで逆に色を目立たせてしまう結果に至ることもあります。
一方で、異所性蒙古斑は、まだ皮膚の薄い幼児期に治療したほうが、レーザーが皮膚内に届きやすく、治療効果が高いといった意見もありますので、担当医とよく相談し、治療の有無を決めるようにします。
伊藤母斑の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による伊藤母斑の診断では、部位や母斑の様子から視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮上層に色素含有メラノサイトが認められます。
また、異所性蒙古斑、青色母斑などの皮膚疾患と鑑別します。
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、母斑を除去します。
およそ3カ月の間隔で、少なくとも5~6回のレーザー照射を行います。まれに軽い色素沈着を残したり色素脱出を来すこともありますが、治療はほぼ100パーセントうまくいきます。
治療時期は何歳からでも可能ですが、小児の場合は乳幼児期からの早期治療が有効です。成人の場合でも、完全に母斑を除去することが可能です。
青色母斑の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による青色母斑の診断では、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。細胞増殖型青色母斑の確定診断は、切除した小結節を顕微鏡を用いて病理組織検査することでつきます。
細胞増殖型青色母斑が疑われる場合は、リンパ節転移を起こすことがあるため、CT(コンピュータ断層撮影)検査やシンチグラム検査(RI検査、アイソトープ検査)といった全身の検査も行う必要があります。
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、通常の青色母斑の場合は悪性化の心配はほとんどないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザーにより、あざを除去します。
レーザー治療は何歳からでも可能ですが、小児の場合は乳幼児期からの早期治療が有効です。成人で濃くなり化粧法で隠せなくなった場合でも、完全に除去することが可能です。
細胞増埴型青色母斑が疑われる場合は、原則として、局所麻酔による手術で深く広範囲に切除します。リンパ節転移が見付かった場合には、リンパ節を切除します。
太田母斑の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による太田母斑の診断では、部位や色素斑の様子から視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮上層に色素含有メラノサイトが認められます。
また、異所性蒙古斑、青色母斑などの皮膚疾患と鑑別します。
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、色素斑を除去します。
治療対象となる太田母斑の色が濃く、範囲が広い場合は、1〜2回のレーザー照射だけは不十分で、およそ3カ月の間隔で、少なくとも5~6回の照射を行います。
治療時期は何歳からでも可能ですが、小児の場合は全身麻酔が必要なため3歳ごろから開始するのが普通で、早期から開始するほうが効果が高いといわれています。成人の場合でも、かなり色調が改善し、完全に色素斑を除去できることもあります。
眼球結膜の色素斑はレーザー照射ができないので、現在は治療法がありません。
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