2022/07/28

🇬🇦陰部単純性疱疹

単純性疱疹ウイルスの感染によって発症する性感染症

陰部単純性疱疹(ほうしん)とは、単純性疱疹ウイルス(単純ヘルペスウイルス)の感染によって発症する疾患。陰部ヘルペス、性器ヘルペスとも呼ばれます。

主に性行為によって、単純性疱疹ウイルスが男女の外生殖器である陰部へ感染して起こります。女性では性器の外側の部分である外陰の病変が目立つため、外陰ヘルペスとも呼ばれますが、病変が膣(ちつ)や子宮頸部(けいぶ)に及ぶこともあります。単純性疱疹ウイルスには1型と2型があり、1型は口や目などの上半身に感染することが多く、2型は性器などの下半身に感染することが多いのが一般的です。

症状の出方は2通りあり、痛みと発熱を伴う急性型(初発型)と、感染後に再発を繰り返す再発型とがあります。単純性疱疹ウイルスの初めての感染によって起こる急性型は、性行為などの感染の機会があってから、多くは1週間以内に発症します。主症状である痛みが出る前に、外陰部のかゆみや違和感を感じることもよくあります。

症状は強く、外陰部のかなり広い部分に水疱や潰瘍(かいよう)ができて赤くただれ、非常に強い痛みがあります。発熱したり、全身がだるいなどの症状を伴うこともあります。病変は女性では外陰部や子宮頸部に現れ、男性では包皮、冠状溝、亀頭に現れます。

女性では強い痛みのために歩行や排尿が難しくなって、入院が必要になることもあります。太ももの付け根のリンパ節が痛みを伴ってはれることも、大部分の人で認められ、髄膜炎を合併することもあります。無治療では、治癒までに2~4週間近くを要します。

単純性疱疹ウイルスはいったん感染すると、完全には排除されずに神経節に潜んでいます。これが心身の疲労や月経、性交などを切っ掛けにして再び活性化すると、陰部単純性疱疹の再発型を発症し、単純性疱疹ウイルスが神経を通って粘膜や皮膚に現れて病変を起こします。

再発型の症状が現れた時は、すでに体内にウイルスに対する抗体ができているので、症状も比較的軽く、小さい潰瘍やいくつか集まった小さな水疱ができます。発熱などの全身症状や、リンパ節のはれなどは伴わないことがほとんど。放置しても多くは1週間以内に治ります。再発の回数は月2~3回から年1~2回とさまざまで、年齢を重ねるにつれて、再発の回数は減少してくるのが一般的。

陰部単純性疱疹の問題点は、繰り返し再発して根治が困難であるため、発症者にとって精神的苦痛が大きいことと、感染しても発症せず無症状でウイルスを排出している場合も多く、本人も疾患に気付かないまま次の相手に移すために予防が困難であることにあります。

性の自由化が進む中で、先進国、開発途上国を問わず、陰部単純性疱疹は世界的に増加の一途をたどっていて、日本における性感染症(STD)の中では、クラミジア感染症に次いで発症が多くなっています。

また、妊娠末期に陰部単純性疱疹になると、単純性疱疹ウイルスが子宮内で胎児に感染することがあります。この際は、皮膚以外にも脳、副腎(ふくじん)、肺、肝臓など全身にウイルスが感染し、流産、死産の原因となります。幸いに出産できても、重い後遺症を残すことが多くなりますので、帝王切開をしなければなりません。自分の手についた単純性疱疹ウイルスが目に入ると、角膜ヘルペスなどを起こす危険性もあります。

急性型の場合には症状が急激に現れるため、男女ともに性器などに痛みのある水疱あるいは潰瘍を認めたら、泌尿器科、婦人科への受診が勧められます。再発型で症状が軽い場合でも、性感染症であるため、治るまでは性行為は控えなければなりません。

陰部単純性疱疹の検査と診断と治療

泌尿器科、婦人科の医師による検査では、女性では外陰部の浅い潰瘍または水疱が診断のポイントになります。特に急性型では、大陰唇の内側と小陰唇に左右対称に病変ができることが多いのも特徴です。

病変部から採取した細胞に多核の巨細胞を認めたり、単純性疱疹ウイルス抗原を検出する補助診断法が有力ですが、感度が低いことが難点です。単純性疱疹ウイルスに対する抗体は、初感染では急性期には陰性で、2〜3週間後に陽性になります。再発型の場合は、ほとんど変化しません。区別すべき疾患には、外陰部に潰瘍ができる梅毒、急性外陰潰瘍、外陰がんなどがあります。

泌尿器科、婦人科の医師による治療では、症状が軽いものには、単純性疱疹ウイルスに効く薬の入った軟こうを塗るだけで治ります。少し状態が進んだものには、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス剤の注射や飲み薬が処方され、水疱や潰瘍には軟こうが処方されます。高熱や激痛などの重症のものには、点滴で静脈注射をすることになります。

急性型は通常、1〜2週間のうちに症状が治まりますが、体からウイルスがなくなるわけではないため、完治は難しく、体力が落ちている際などに再発しやすくなります。再発した場合は病変も小さいので、軟こうによる治療で多くの場合は十分です。飲み薬による治療も行われますが、再発後少なくとも2日以内に治療を開始しないと有効でないといわれています。

再発を予防するためにも、日ごろから睡眠を十分とって、バランスのよい食事を心掛ける、ストレスをなくす工夫も必要となってきます。ウイルスはそれほど強くありませんから、健康な人では特に心配はありません。

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