腰に5つある腰椎の前方と後方の骨が分離して連続性が絶たれ、腰痛が生じる状態
腰椎(ようつい)分離症とは、腰に5つある腰椎の前方部分と後方部分の骨が分離し、連続性が絶たれた状態。主な症状は、腰痛です。
腰椎の椎間板の付いている前方部分の椎体と、椎間関節の付いている後方部分の椎弓との間にある椎弓根が割れて、椎体と椎弓、つまり腰椎の前方部分と後方部分の連続性が椎弓根の部分で絶たれて、離れ離れになった状態です。
腰椎分離症には、先天性のものと後天性のものがあります。先天性の腰椎分離症は生まれ付きのもので、分離以外にも椎体や椎弓の形態異常を認めることが多く、腰椎の1つ、または複数が前後にずれて、腰椎の中の神経を圧迫し、腰痛や下肢の痛み、しびれが生じる腰椎すべり症を生ずることがあり、注意が必要です。
後天性の腰椎分離症の多くは、骨も筋肉も成長途中で未熟な青少年期、特に10歳から14歳くらいで激しいスポーツなどを行い、繰り返し腰椎に負荷がかかったために、椎弓根が疲労骨折を起こしたために生じています。腰に重い負担がかかる激しい陸上運動や、激しい腰のひねり、強い屈伸や背屈を伴う運動が原因になることもあります。しかし、スポーツは原因の一つであり、体質的に骨が弱い要素もあります。
この腰椎分離症は、積み木のように重なっている腰椎の第4、第5腰椎に特に多く発症します。分離した腰椎とその下の腰椎の連結が椎間板だけとなるために、腰椎が不安定になります。不安定の状態で、筋肉や靭帯(じんたい)に腰椎を支えるための重い負担がかかると、炎症も起こりやすくなります。
最も多い症状は鈍く重い腰痛で、急性腰痛症(ぎっくり腰)のような急な痛みではありません。まれに、下肢の痛みやしびれを伴う場合があります。そのほかの症状としては、同じ姿勢を続けると腰が痛くなったり、背中を後ろに反らせる、座る、立つ、歩くのがつらいなどが一般的です。激しい運動中に腰が抜けるなどの症状も出ます。腰椎に分離が生じると、これを修復しようと生体反応が起こり、分離部には肥厚した骨や線維性組織が形成されます。これらの組織が椎弓の関節突起部の真下を通る神経根を圧迫すると、下肢に痛みやしびれを生じさせることになります。背中を後ろに反らせると、分離部に圧迫が加わるために、痛みの程度がかなり増すことになります。
青少年で腰椎分離症を発症し、激しい痛みがないために安静にもせずに成人までほうっておいて、その後、痛みが出ることもあります。この成人の腰椎分離症の場合、同じ姿勢を続けたり、長時間の立ち仕事や重労働の後に腰の痛みが強くなります。痛みが強くなる原因は多くあり、場合によっては腰を曲げられなくなるほどの激しい痛みが強く出ることもあります。
腰椎分離症は、日本人の5~7パーセントくらいにあるといわれています。青少年のスポーツ活動で腰痛が出現する場合は、腰椎分離症を疑ってみることも必要です。腰椎分離がたまたま撮られたX線(レントゲン)検査により発見されても、全く無症状で痛みがない場合もあり、症状が軽度であれば心配する必要はありません。
しかし、腰痛とともに下肢の痛みやしびれがある場合は、整形外科で相談されることが勧められます。腰椎分離症を治療せず放置しておくと、大人になってから腰椎が前後にずれる腰椎すべり症などの慢性腰痛の原因になることもあるからです。
腰椎分離症の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行えば、容易に腰椎分離症と確定できます。しかし、腰椎分離があっても、必ずしも症状を現しているとは限らないので、注意を要します。
そのほかの画像検査としてCT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査がありますが、これらは主に手術を前提に神経の圧迫の状態を調べたり、腰椎分離部をはっきりと観察するために行うことが多くなっています。
整形外科の医師による治療では、青少年の腰椎分離症の場合、急性期であれば6カ月ほどのコルセット着用で分離部の骨癒合が期待できます。この時に用いるコルセットは、整形外科で腰部の型をとって作るもので、市販のコルセットでの効果は確認されていません。
成人の腰椎分離症の場合、仕事中にコルセットを着用することによって、労働による腰痛の予防効果があります。
薬物療法では、痛みに対して消炎鎮痛剤や筋弛緩(しかん)剤などを用います。また、神経賦活剤や末梢(まっしょう)循環改善剤なども用いて、神経の修復を助ける働きを起こさせます。
そのほかの保存療法には、腰痛に対しての温熱療法を主とした理学療法や、下肢痛やしびれに対しての神経ブロック療法などがあります。
これらの保存治療でも症状が改善しない場合は、手術療法が選択肢に入ってきます。腰椎分離症では、椎体と椎弓の連絡性が途絶えた不安定な状態が原因なので、通常、脊椎固定術と呼ばれる手術が行われます。
固定術は不安定な腰椎同士を固定して動きをなくす方法で、最近ではチタン合金の固定器具が補助的に用いられるようになっています。特殊な例として、椎間板変性のない青少年の腰椎分離症に対して、分離部をつなぐ分離部修復術と呼ばれる方法も行われつつあります。
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