本来の膵臓から全く違う臓器に膵臓の組織が存在する形成異常
異所性膵(すい)とは、膵臓と全く違う臓器に膵臓の組織が紛れ込む形成異常。迷入膵、副膵とも呼ばれます。
8割は胃の出口付近の幽門部、十二指腸、小腸の上半分の空腸に存在しますが、まれに小腸の下半分の回腸、腸間膜、胆道、肝臓、脾臓(ひぞう)、メッケル憩室、虫垂などにもみられることがあります。
膵臓は胃の背側にある臓器で、胎児期に胃と膵臓の組織が別れてそれぞれの臓器に分化してくのですが、膵臓の組織のごく一部が胃などの筋肉の層に誤って入り込んだ状態で、胃と膵臓が別れてしまうことがあります。この誤って胃などに入り込んだ膵臓組織が異所性膵で、胃の粘膜の下にある筋肉の層に入り込んでいる場合は胃粘膜下腫瘍(しゅよう)と呼ばれる形態をとり、十二指腸、小腸などの粘膜の下にある筋肉の層に入り込んでいる場合は消化管粘膜下腫瘍と呼ばれる形態をとります。
大きさは0・2ミリから5ミリ程度であり、その多くは1つだけで存在します。
組織学的には正常な膵臓と同じで、腸管内に膵液を出せる構造になっている場合もある一方、腸管内に膵液を出せる構造になっていなかったり、インシュリンを製造するランゲルハンス島がないものだったりと、完全な膵臓としては機能していない場合もあります。
多くは無症状であり、多くの人は異所性膵の存在に気付いていませんが、内視鏡の検査でたまたま見付かることがあります。
ただ、膵臓に発生し得る病変はすべて発生する可能性があり、異所性膵が胃や小腸の潰瘍(かいよう)や出血の原因になることもあり、腹痛や腹部不快感を伴うこともあります。
膵管が腸管につながらずに閉じている場合は、異所性膵炎を発症することもあり得ます。ごくまれに異所性膵が炎症を起こして異所性膵炎を発症すると、みぞおちや背部の強い痛みを感じます。
異所性膵がんの発症もあり得ることで、膵臓がんの検査で本来の膵臓に異常が全く見付からない場合には、本来の膵臓と連続性を欠き血行支配も異なる異所性膵の病変を疑うことも重要で、それにより異所性膵がんを発見することに成功した例もあります。
検査で異所性膵の存在を指摘されたら、まず内科か外科を受診して、手術が必要なのか、それとも経過観察でよいのかどうかを診断してもらいます。
異所性膵の検査と診断と治療
内科、外科の医師による診断では、通常、血液検査、腹部X線(レントゲン)検査、腹部造影CT(コンピュータ断層撮影)検査、内視鏡検査などを行います。潰瘍性病変を認める場合は、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検で、腫瘍の種類やがんの有無を調べます。
内科、外科の医師による治療では、基本的には無症状で特に害もないので、小さいものは年に1、2回、内視鏡による精密検査を行って、経過を観察します。
大きいものや、出血するもの、悪性腫瘍が疑われるものは、内視鏡下に、あるいは外科的に手術をして摘出します。異所性膵がんは全摘出しても重大な影響が全く出ないので、手術は本来の膵臓がんよりも格段に簡単です。小さいものの経過観察中に、大きさや形態に変化がみられるようであれば、手術も考慮します。
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