国立がん研究センターは、転移するリスクの低い早期の大腸がんは大きさが2センチメートル以上でも内視鏡治療で再発リスクを抑えられるとの研究結果を発表しました。電気メスでがんを切除する内視鏡治療「ESD」の効果を確かめたもので、外科手術に比べて生活の質を高く保ちやすく、早期大腸がんの標準的な治療法になる可能性があるとしています。
国内の医療機関で「ESD」を受けた早期大腸がん患者で、がん組織の大きさが2センチ以上だった約1700人を対象に、手術後5年間の生存率や治療箇所近くでの再発率、腸管を手術せずに温存できた確率を調べました。
5年生存率は約94%と高く、治療時に再発リスクがないと判断された人で大腸がんにより死亡した人はいませんでした。がんが再発した人は8人と0・5%にとどまり、全例で内視鏡による追加治療が可能でした。腸管を温存できた確率も約89%と高くなりました。ただ、治療後に再発とは異なる新たな大腸がんを発症した例が1%あったことから、定期的な経過観察が重要としています。
早期の大腸がんはがん組織が粘膜や粘膜下層の浅い部分にとどまるため、転移の危険性が低く、内視鏡治療などで切除すれば根治が期待できます。
内視鏡治療には円形のワイヤでがんを切除する「EMR」というタイプもあり、「ESD」よりも簡単で治療時間も短くすみます。ただ、がんが2センチより大きいと分割して切除することになるため取り残しやすく、10~20%が再発するとされます。一方、外科手術はがんを残さず切除しやすいものの、患者の負担が大きく、術後の生活の質に影響しやすくなります。
国立がん研究センター中央病院の斎藤豊・内視鏡科長は、「患者の負担が小さいESDで多くの人が完治することがわかった。早期のがんが適用なので検診を受診し、なるべく早くがんを見付けることが重要だ」と話しています。
2022年8月12日(金)
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