年齢を重ねるとともに筋肉量が減少し、筋力または身体能力が低下した状態
加齢性筋肉減弱症とは、年齢を重ねるとともに筋肉量が減少し、筋力または身体能力が低下した状態。サルコペニア、原発性サルコペニアとも呼ばれます。
1980年代後半に、アメリカの研究者が加齢性筋肉減弱症、すなわちサルコペニアを提唱しました。主に高齢者にみられ、運動機能、身体機能に障害が生じたり、転倒、骨折、寝たきりの危険性が増大し、自立した生活を困難にする原因となることがあります。
2010年に欧州の老年医学の研究グループが診断基準を作りましたが、欧米人のデータを基にした基準値は、体格の異なるアジア人には必ずしも適さないと考えられました。そこで、日本、韓国、中国、香港、タイなど、アジアの7つの国・地域の研究者が協力し、2013年にアジア人向けの診断基準をまとめました。
加齢性筋肉減弱症の定義は、(1)筋肉量の減少(2)筋力の低下(3)身体能力の低下のうち、(1)と、(2)か(3)のどちらかがある状態です。
アジア人向けの診断基準では、高齢者が加齢性筋肉減弱症かどうかを診断する際、まず握力と歩行速度を測定します。基準値は、握力が男性26キログラム未満、女性18キログラム未満、歩行速度が秒速0・8メートル以下。どちらか一方でも該当すると、加齢性筋肉減弱症が疑われます。
握力の基準値は、両手で各3回測り、最高値をとります。歩行速度の秒速0・8メートルの目安は、青信号で横断歩道を渡りきれるかどうかです。
確定診断には、X線を用いる特殊な検査法であるDXA法(二重X線吸収法)で筋肉量を測定し、男性7・0(キログラム/平方メートル)、女性5・4(同)の基準値未満なら、加齢性筋肉減弱症とされます。
ただし、加齢性筋肉減弱症、すなわちサルコペニアは疾患名として確立しておらず、この筋肉量測定法は普及していないので、握力か歩行速度が基準値以下なら注意が必要と考えられます。
70歳以下の高齢者の13〜24パーセント、80歳以上では50パーセント以上に、加齢性筋肉減弱症を認めるという報告があります。仮に筋肉量が基準値を超えているのに、握力や歩行速度が基準値以下なら、パーキンソン病や変形性膝(しつ)関節症など、ほかの病気が影響している可能性もあるとされます。
筋肉の量は20歳代前半をピークに、25~30歳ころから減少の進行が始まり、生涯を通して進行していきます。40歳代以降は年1パーセントの割合で減少し、75歳を超えると減る割合はより大きくなります。筋肉の量の減少は、活動性の低下だけでなく、組織や細胞の変化など多くの因子によって起こります。
また、筋肉の量の減少は広背筋、腹筋、膝伸筋群、臀筋(でんきん)群などの抗重力筋において多くみられるため、立ち上がりや歩行が次第に億劫(おっくう)になり、放置すると歩行が困難になり、高齢者の活動能力の低下の大きな原因となっています。
頻繁につまずいたり、立ち上がる時に手を掛けるようになると、症状がかなり進んでいると考えられます。特に、つまずきは当人や周囲が注意力不足のせいだと思い込んでいることが多いため、筋力の低下が原因と気付かないことが多く、注意が必要です。
加齢性筋肉減弱症の対策と軽減策
筋肉量の減少や筋力の衰えを予防、改善するには、運動と栄養補給の組み合わせが大切です。
運動としては、特に下半身の筋肉を鍛えるスクワットなどが推奨されます。ウオーキングなどの有酸素運動も、取り入れたほうがよいでしょう
栄養補給としては、蛋白質(たんぱくしつ)に含まれる必須アミノ酸の一つで、筋肉を作る役割があるロイシンの摂取が効果的。肉や魚、卵、乳製品、大豆など、ロイシンを多く含む食品を毎日食べたほうがよいでしょう。
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