頭蓋骨の欠損部から頭蓋内容物の一部が飛び出した状態
脳瘤(のうりゅう)とは、頭蓋骨(とうがいこつ)と硬膜の欠損があり、そこから頭蓋内容物の一部が脱出した状態。潜在性二分頭蓋とも呼ばれます。
先天性の脳奇形の一つで、新生児1万人に1人程度発生しています。原因は、胎児における遺伝子異常や、妊婦におけるビタミンB群の一種である葉酸欠乏が考えられています。
母胎内で、脳や脊髄(せきずい)などの中枢神経系のもとになる神経管が妊娠の4~5週ごろに作られ、その神経管が閉鎖した後に、脳組織の周囲にあって、頭蓋骨の一部を作る間葉(かんよう)組織の形成不全によって、頭を形作る骨格である頭蓋骨と、脳を取り巻く髄膜の1つである硬膜に欠損が生じ、頭蓋内容物の一部が頭蓋外へ脱出します。
脱出した頭蓋内容物には、脳組織が含まれている髄膜脳瘤や、脳組織が含まれず髄膜や脳脊髄液のみの髄膜瘤、髄膜と脳脊髄液と脳室が含まれる脳嚢(のうのう)瘤などがあります。小さな脳瘤は、頭血腫という分娩(ぶんべん)の際に胎児の頭が強く圧迫されるために、頭蓋骨と髄膜との間に生じる血液の塊に類似しているものの、小さな脳瘤の基部に頭蓋骨の欠損が認められる点で異なります。
脳瘤の約9割は頭蓋円蓋部に発生し、残り約1割は頭蓋底部に発生します。通常、正中部に発生し、後頭部と鼻腔(びこう)を結ぶ線に沿うあらゆる部位から、頭蓋内容物の一部が脱出しますが、後頭部にできるケースがほとんどです。極めてまれに、前頭部または頭頂部に非対称的にみられることもあります。
頭蓋円蓋部や鼻腔前頭部に発生する脳瘤は外表上で認められやすく、鼻腔や副鼻腔内に発生する脳瘤は外表上では認められません。
まれに、後頭と頸椎(けいつい)の移行部に脳瘤が発生して、頸椎椎弓が欠損し、後頭部と背部が癒合して頸部が背側に過伸展する後頭孔脳脱出や、脳幹や小脳が脱出するキアリ奇形Ⅲ型を示すことがあります。
後頭部に発生する髄膜脳瘤では、小脳虫部欠損(ダンディー・ウォーカー症候群)や、ほかの脳形成異常を合併しやすく、脳組織の一部が頭蓋外へ脱出するため、約3割に頭蓋骨が先天的に小さく変形を伴う小頭症を合併します。脳形成異常、脳組織の大きな脱出、小頭症などは、発達や知能面での予後不良の誘因になります。
後頭孔脳脱出やキアリ奇形Ⅲ型の生命予後は、不良です。頭蓋底部に発生した脳瘤では、閉塞(へいそく)性の呼吸障害、脊髄液漏による反復性の髄膜炎などを示します。
脳瘤の位置、大きさよって、現れる症状はさまざまですが、重篤な奇形を合併していることが多く、過半数が自然流産するか、人工妊娠中絶を受けるかしており、仮に出生しても24時間以内に死亡します。
妊婦の超音波(エコー)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査で、胎児の脳瘤の診断がつくことがあり、脳瘤の位置、大きさによっては、出産後の手術による修復が可能なこともあります。
しかし、脳神経外科、小児外科、小児科、リハビリテーション科、整形外科、泌尿器科を含む包括的診療チームによる治療が必要ですので、このような体制の整った病院を受診するとよいでしょう。
出生前診断で発見された場合には、産道通過の際に胎児の脳瘤が破れるのを予防する目的で、帝王切開を行う場合もあります。
脳瘤の検査と診断と治療
産科、産婦人科の医師による脳瘤の診断では、妊婦の超音波(エコー)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査で、胎児の脳瘤の診断がつくことがあります。
胎児が脳瘤と確定した場合、多くはその時点で妊娠を継続するかどうかを選択することになります。その致死性の高さから、人工妊娠中絶を選択する妊婦が多く、出産まで進むケースはまれな状況となっています。
脳神経外科、脳外科の医師による脳瘤の治療では、脳瘤が破れて細菌感染を来したり、脳出血やくも膜下出血を生じるのを防ぐために、脳瘤を手術で修復します。脳瘤を脳血管から切り離すか、脳瘤の中にコイルを詰めて大きくなるのを抑えます。
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