少年期の野球のピッチャーに多く、腕の使い過ぎで肘の後方に炎症や痛みが起こる関節障害
後方型野球肘(ひじ)とは、投球動作による腕の使い過ぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘の後方に炎症や痛みが起こる関節障害。
後方型野球肘は、小学生から中学生の野球少年に多くみられますが、成人以降の野球選手にもみられます。
野球の投球動作では、ボールが手から離れ腕の動きが減速されるリリース期から、最後に腕を振り切るフォロースルー期にかけては肘が伸ばされるため、肘の後方に牽引(けんいん)力や張力が加わり、肘を伸ばす筋肉である上腕三頭筋が付着する肘頭(ちゅうとう)は、少し上にある肘頭窩(か)と衝突するようなストレスを受けます。
成長期の少年では、肘頭のすぐ下に、膨張することで骨が大きくなる成長軟骨の部分である骨端線があります。骨端線の部分は、骨の成長が終了すると均一で強固な骨になりますが、成長が終了する直前には逆に軟骨層の部分が薄くなっていて、外力に弱く、関節にかかるストレスを受けやすくなっています。
そのため、投球動作の繰り返しにより、肘頭の成長軟骨の部分である骨端線に微小なストレスが蓄積すると、骨端線が損傷され、離開、剥離(はくり)を起こしたり、疲労骨折を起こし、後方型野球肘を生じます。
症状としては、投球時や投球後に肘が痛くなります。肘の伸びや曲がりが悪くなり、急に動かせなくなることもあります。肘の後ろの肘頭、時に肘頭窩に圧痛がみられることもあります。
成長期の小中学生の後方型野球肘では骨の障害が多いのに対し、成人以降では肘頭周囲に骨の出っ張りである骨棘(こつきょく)が生じ、関節の動きが悪くなったり、肘の皮膚の表面近くを通る尺骨(しゃくこつ)神経が骨棘の圧迫で損傷されて、まひを生じ、手指のしびれや感覚障害、握力が落ちるなどの運動動障害が起こる尺骨神経まひを伴うこともあります。
少年にみられる後方型野球肘の場合、初期の痛みは投球時のみで、すぐに症状がなくなるので軽くみられがちですが、発症初期に投球動作を休止しないと骨端線の閉鎖が遅れたりする状態になって骨の変化を来し、結果的に数カ月から数年の投球禁止を余儀なくされます。
肘の痛みが3週間以上続いたり、肘の曲げ伸ばし角度が悪くなった際には、整形外科を受診することが必要です。
後方型野球肘の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、問診をしたり、関節の動きを調べ、投球時の肘の痛み、肘後方の圧痛がある場合に後方型野球肘を疑います。
X線(レントゲン)検査を行い、肘頭の骨変化、亀裂骨折、疲労骨折像を認めれば、後方型野球肘と確定します。
整形外科の医師による治療では、主原因である投球動作を数週間禁止し、電気治療や、リハビリでのストレッチを行います。
骨変化が認められる場合は、投球動作を3カ月以上禁止します。3カ月以上経過観察し、軟骨部分の骨癒合による修復傾向がみられない場合は、手術で遊離しかけた軟骨片を再固定します。
遊離骨片が肘の関節の透き間に挟まって、関節の運動が不能となっている場合は、手術で軟骨片を摘出します。
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