舌の表面に多数の溝が形成されている状態
溝状舌(こうじょうぜつ)とは、舌の表面に多数の溝(みぞ)が形成されている状態で、しばしば左右の側面に対称的に溝が生じます。皺襞舌(しゅうへきぜつ)とも呼ばれます。
ほとんどは先天性で、染色体の異常によって生じるダウン症候群では80%に確認されます。一方で何らかの全身疾患の症状として生じることもあり、虫歯が悪化して発症するメルカーソン・ローゼンタール症候群では前兆現象として出現することもあります。
舌の表面に溝、あるいは亀裂(きれつ)、しわができる原因は、わかっていません。人によって舌にできる溝の数や走行方向、深さなどに違いがあり、特定の形状の溝ができるという法則がないことが一因として考えられます。
溝状舌には、遺伝性である先天性溝状舌と、全身疾患や外傷感染、口腔(こうくう)乾燥などが原因で生じる後天性溝状舌があります。
ほとんどが先天性溝状舌とされており、これは形成異常、奇形、変型症といった疾患に分類されます。
一方、後天性溝状舌は、小児期にはまれで、青年期で増加して症状も顕著になり、老年期が最も多く、加齢とともに頻度が上昇するのが特徴です。
後天性溝状舌は、舌炎や外傷、ビタミン欠乏症、メルカーソン・ローゼンタール症候群などの全身疾患に付随して起こることもあります。メルカーソン・ローゼンタール症候群では、再発性顔面神経まひ、肉芽腫(にくげしゅ)性口唇炎とともに溝状舌を併発することがあります。高齢者では、免疫力や唾液(だえき)分泌量の低下による口腔衛生状況の悪化が切っ掛けで、発症しやすくなるともいわれています。
舌の表面の形成異常のためほぼ無症状で、発声、味覚、嚥下(えんげ)機能などの舌の諸機能に対する影響もありません。
溝状舌による溝は幅が狭く、安静時には溝が密着しているため、歯磨きやうがいによる清掃が不十分だと細菌の増殖や炎症などが生じ、口臭、痛み、味覚障害や運動障害が生じる場合があります。
また、舌ブラシで舌の表面を強くこすりすぎて粘膜を損傷したために、痛みが生じる場合もあります。舌の表面の粘膜にある多数の微小な小突起である舌乳頭の発達が不良で、舌の表面に淡紅色の地図のような1ミリから3ミリの模様が見られる地図状舌を合併していることも多く見受けられます。
溝状舌の検査と診断と治療
歯科口腔外科、口腔内科などの医師による診断では、舌の表面に特徴的な形成異常が出現するため、基本的には視診と問診を実施します。
ほとんどの場合では、組織の一部を採取し顕微鏡で調べる生検は不要とされていますが、全身疾患の関与が考えられる場合や、症状がひどい場合には生検を実施することもあります。
歯科口腔外科、口腔内科などの医師による治療では、症状がない場合の溝状舌は正常範囲と考え、処置を施しません。
しかし、溝に舌苔(ぜったい)がたまって細菌が付着しやすいため、日ごろから溝の内部が不潔にならないように、舌ブラシなどを用いて舌の表面を清掃したり、マウスウォッシュ(洗口液)を用いて口腔内の清潔を保つことが重要です。
炎症のため症状がある場合には、殺菌効果のあるうがい薬(イソジンガーグルなど)が効果的です。
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