結核菌が男性の生殖器に感染することによって起こる感染症で、肺外結核の一種
男性性器結核とは、結核菌が男性の生殖器に感染することによって起こる感染症。肺外結核の一種です。
原因菌である結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌です。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。
基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。
肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。
男性性器結核は、結核菌が前立腺(ぜんりつせん)、精巣(睾丸〔こうがん〕)、精巣上体(副睾丸)、精嚢(せいのう)腺、精索に病巣を作ることによって起こります。
結核菌が血管を通って前立腺、精巣上体、精巣などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って前立腺などに逆行性に感染し、炎症を起こして、硬い凹凸のあるはれを生じます。
男性性器結核で感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に精巣などの痛み、不快感、下腹部痛を生じることもあります。
また、精巣上体の結核は精路の物理的閉塞(へいそく)から、精巣の結核は精子を産生する精巣機能の障害から、それぞれ男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。
感染が進行すると、精巣上体と精巣の境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には精巣上体、精巣を破壊することもあります。初めは片方の精巣上体、精巣にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。
結核が減少している近年では、結核の二次的発症である男性性器結核の頻度は低下しています。
男性性器結核の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。
前立腺や精巣、精巣上体が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、精巣と精巣上体が一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。
男性性器結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱鏡などの画像検査を行うこともあります。
また、前立腺や精巣にがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、前立腺がんなどの検査を同時に行うこともあります。
泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。
肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。
ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。
抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、外科的療法を検討します。腎臓結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。
自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。
早期発見、早期治療を行えば性器結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。
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