外耳道の入り口に生えている毛穴から細菌が入って、炎症が起きる疾患
耳(じ)せつとは、外耳道(がいじどう)の外側3分の1に位置する軟骨部外耳道に起こる限局性外耳道炎が悪化し、膿瘍(のうよう)ができる疾患。急性化膿(かのう)性限局性外耳道炎、急性限局性外耳道炎とも呼ばれます。
外耳道炎は、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道の皮膚に、細菌が感染して炎症が起こる疾患であり、この外側3分の1に位置する軟骨部外耳道に起こる限局性外耳道炎と、内側の3分の2に位置する骨部外耳道に起こるびまん性(広汎〔こうはん〕性)外耳道炎とに分かれます。
耳せつに悪化する以前の限局性外耳道炎の症状は、耳がツンとしたり、かゆかったり、熱いような感じがします。耳鳴りを伴うこともあります。この時に耳に触るとチクッとした痛みを感じるのが特徴で、これが耳を触らなくても痛む中耳炎と異なる点です。
口を開けたり、食事をした時にも、痛むことがあります。炎症がひどいと、軽い難聴を伴うこともあるものの、一般的には聴力に影響するようなことはありません。
限局性外耳道炎の症状が進んで、毛穴から化膿菌が入って増殖し、毛を包んでいる毛包とその周囲に膿瘍ができる耳せつになると、耳に触らなくても痛むようになり、痛みも強くなってきます。時には痛くて夜眠れないということもあります。
炎症がピークを過ぎると膿瘍が破れて、膿(うみ)が出てしまい、痛みは自然に治まります。
鼓膜に近付くと毛は生えていないので、耳せつが外耳道全体に広がることは、ほとんどありません。鼓膜や中耳への影響も、ほとんどありません。
びまん性外耳道炎の場合も、かゆかったり、熱いような感じがするのが一般的な自覚症状です。慢性化すると、かゆみがひどくなり、時に耳が詰まる感じがする耳閉感が出てきます。病変が鼓膜方向に進展すると、鼓膜の炎症、肥厚を合併することがあります。
耳せつなどの外耳道炎の原因は、耳かきや不潔な指先で外耳道をいじって傷を付けたため、そこから細菌、主にブドウ球菌が入り、その細菌に感染して起こるのが一般的です。中耳炎などで耳垂れ(耳漏)があると、その細菌が外耳道に侵入し、感染して起こることもあります。
また、洗髪時や水泳時などに水が耳に入ったままになって、細菌感染を起こすこともあります。白髪染めや化粧品なども、要注意です。さらに、免疫が低下した糖尿病の人にも起こりやすく、複数の耳せつができて、何度も症状を繰り返し、治りにくいとされます。
耳せつを発症しても、炎症が軽度で元の外耳道が健康であれば、多くの場合は放置しても自然に治ります。1〜2日たっても症状が軽快しない場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。
耳せつの検査と診断と治療
耳鼻咽喉科の医師による診断では、耳介の後ろ下や前方の下部がはれていて、触ると痛く、耳垂れに血や膿が混じっていても、ねばねばした粘液が混じっていないことなどから、判断します。
また、X線(レントゲン)検査で骨の部分に異常がなく、聴力検査で異常がないことも、判断の目安となります。細菌検査を行うと、ブドウ球菌が頻繁に認められます。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、まず耳垢(みみあか)を取り除きます。鼓膜内視鏡で耳の中を見ながら、耳垢鉗子(じこうかんし)や耳専用の器具で耳垢をつまんだり、細い吸引管で耳垢を吸い取ります。耳垢が硬くて取り除きにくい場合は、薬で耳垢を軟らかくしてから洗浄、吸引する方法を行います。
耳垢を取り除いた後は、外耳道の消毒を行って清潔にした上で、抗生剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)を含んだ軟こうの塗布、抗生剤の内服を行います。
耳の痛みがある場合には、鎮痛剤を内服して痛みを抑えます。耳のかゆみがある場合には、かゆみ止めを内服してかゆみを抑えます。
さらに、耳せつの自潰(じかい)、つまり、破れて膿が出るのを早めるために、温湿布、サリチル酸の塗布、また、綿花で作ったタンポン(ゴットスタイン・タンポン)で圧迫します。
耳せつが明らかに目立つ場合や、激痛を伴う場合は、耳せつをメスで切開することもあります。
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