体を動かさない状態が続くことが原因で、全身の機能が低下する障害
廃用症候群とは、長期の安静で体を動かさないことによって二次的に起こる、全身の機能低下の総称。廃用とは使わないという意味で、廃用症候群は生活不活発病とも呼ばれます。
高齢者や、持病のために安静が必要な人に起こりやすく、寝たきり状態や入院などが切っ掛けとなることが多くみられますが、災害時の避難生活でも多発することから、東日本大震災発生後、厚生労働省などは注意を呼び掛けています。
症状としては、歩行、食事、入浴、洗面、トイレなど身の回りの動作が不自由になり、家事や仕事、趣味やスポーツ、人との付き合い、電話やメールで連絡をとるなどの日常活動も低下します。
健常な人でも体を動かさないでいると、意外に早く筋力が落ちたり、関節が固まるなど運動器官の機能低下がみられます。安静による筋力低下は1週目で20パーセント、2週目で40パーセント、3週目で60パーセントにも及び、1週間の安静によって生じた筋力低下を回復するには1カ月かかるともいわれています。特に高齢者では、その範囲が大きく、進行が早くなります。
体を動かさなくなり、頭も使わなくなったために起こる機能の低下は、筋肉や関節だけではなく、全身のいろいろの臓器に生じてきます。抑うつ状態、仮性痴呆(ちほう)、偽痴呆などの精神や知能の障害、床擦れ、廃用性骨委縮(骨粗鬆〔こつそしょう〕症)、起立性低血圧、静脈血栓症、沈下性肺炎、尿路結石、尿閉、尿失禁、便秘などが、主な障害として挙げられます。
「年のせい」と思いがちな、いろいろな動作の不自由や体力の衰えが、実はこの廃用症候群によるということも多いのです。また、「病気のため」と思っていることに、実はこの廃用症候群が加わっていることも多いのです。
廃用症候群はいったん起こると悪循環に陥りやすく、機能の回復には相当の時間を要するため、治療よりも予防のほうが大切です。すなわち、動かして起こるリスクより安静にして起こるリスクのほうが高いことを認識し、動くことで心身の機能低下を予防しなければなりません。家族や周囲が早期に気付けば、積極的に体を動かさせることで機能の改善、回復も見込めます。
体を動かす用事や機会を増やしながら、自然に体や脳を活性化させたり、腰や脚など下半身の筋肉を保ったりすることが大切。外出する意欲を持てるよう仲間を作るのもよいでしょう。
より進行した高齢者に対しては、トイレまで歩きやすいよう手すりを設置したり、シルバーカーを利用したり、介助者が手を引くなどの方法もあります。ひざの痛みがあるとかがみにくいので、トイレを和式でなく洋式にすると使いやすくなります。
高齢者の介護では、特に寝たきりでいることによって起こる廃用症候群を防ぐことが大切であるといわれています。それぞれの症状や環境に応じて、安全に配慮しながら工夫を心掛けることです。
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