乾癬の一種で、皮膚の表面に膿を持ち、発熱などの症状も現れる皮膚疾患
膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)とは、乾癬と呼ばれる皮膚疾患の中で、膿疱(膿〔うみ〕)が数多く皮膚の表面に現れる疾患。
膿疱性乾癬には、症状が手足などの体の一部に限定して現れるものや、症状が全身に現れるものがあります。後者は、汎発(はんぱつ)性膿疱性乾癬と呼ばれ、多くは重症化します。
汎発性膿疱性乾癬は、厚生労働省が認める特定疾患に認定されています。まれな疾患で、日本での発症者は推定で約1500人。
膿疱性乾癬は、感染症などが関係して発症すると考えられていますが、原因の詳細はわかっていません。発症者の中には扁桃(へんとう)炎を合併する人がおり、その扁桃を切除すると症状が改善されるので、細菌感染と関係があると考えられていますが、まだはっきりとしてはいません。
また、長い間ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)を使用してきた乾癬の発症者が、急に使用をやめることにより膿疱性乾癬の症状が出て悪化する場合があるため、ステロイド剤の中止が誘因と考えられる場合もあります。
妊娠を切っ掛けに膿疱を持った地図状の赤い発疹(はっしん)が全身に生じる疱疹状膿痂疹(ほうしんじょうのうかしん)は、膿疱性乾癬の一つのタイプと考えられています。
初期症状として、皮膚がひりひりしたり、焼けるような痛みが発生し、全身の各所に、にきびのような赤い発疹ができます。2~3日のうちに急速に大きくなり、それとともに赤い発疹の回りを囲むように白色または黄色の膿疱が出て、中心は茶褐色の色が付いた状態となっていきます。
発疹とともに高熱を伴い、全身のむくみ、関節痛が起こります。全身がだるく、口の中が荒れ、それらが合わさって食欲が低下するため、低栄養となることもあります。
皮膚に膿疱が多発すると、外部からの病原体から身を守る機能が低下し、全身の水分バランスが崩れ、さまざまな器官に影響を及ぼします。
長期間にわたって皮膚に膿疱が発生すると、高齢の発症者は心臓や腎臓(じんぞう)などに負担がかかり、命にかかわる場合もあります。
症状が現れた際は、速やかに皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の専門医がいる医療機関を受診することが勧められます。初めて発症した際は、入院して治療することが望ましいと考えられます。
膿疱性乾癬の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、特徴的な発疹と経過から判断します。診断の確定のために、発疹の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行います。血液検査により、炎症の程度や内臓に影響があるかどうかを判断します。また、細菌感染による膿疱との区別をするために、細菌検査も行います。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、発症者の年齢やほかの疾患の有無、症状の進行度、使用する薬剤などを総合的に判断して治療法を選択します。
全身管理としては、高熱に対しては解熱剤を投与し、水分バランスを調整するために点滴を行い、皮膚の機能を補うために軟こうを使用します。膿疱が多量に出る場合は、肌を保護するためにガーゼを当て包帯をします。
一種の免疫反応の異常により生じるとされる乾癬そのものに対しては、外用薬、内服薬、光線療法、注射薬などで改善を図ります。
外用薬には、炎症を抑制するステロイド剤が多く用いられています。そのほか、皮膚の細胞が増殖するのを阻害する活性型ビタミンD3外用薬も、ステロイド剤ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。
内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。
光線療法は、紫外線の増感剤であるメトキサレン(オクソラレン)を皮疹部に塗り、長波長紫外線UVAを当てる治療で、PUVA(プーバ)療法といいます。乾癬が全身にある場合、入院して内服のメトキサレンを使用してPUVA療法を行う場合もあります。紫外線を当てることで、異常な免疫反応が抑制され、効果が得られると考えられています。
近年、PUVA療法に代わる光線療法として、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法も利用されるようになってきています。
注射薬は、生物が作り出す蛋白(たんぱく)質をもとに作られた生物学的製剤という新しいタイプの薬を、皮下注射や点滴で投与し、体の免疫機能などにかかわる物質で、過剰に増えると乾癬の症状を引き起こすサイトカインの働きを弱め、乾癬の皮膚症状の改善を図ります。
現在日本では、腫瘍壊死(しゅようえし)因子αというサイトカインを抑えるインフリキシマブ(レミケード)という生物学的製剤を用いることができます。しかし、生物学的製剤もすべての発症者に必ず効果があるとはいえず、副作用が現れることもあり、長期的に投与した場合の影響については不明です。
外用薬、内服薬、光線療法、注射薬のいずれの治療法も一長一短があるため、治療により得られる効果と副作用のリスクの兼ね合いを考え、うまく組み合わせて症状をコントロールすることが大切です。
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