鼻の入り口、鼻毛の生えている部分に炎症が起きた状態
鼻前庭炎(びぜんていえん)とは、鼻の穴の入り口付近の鼻前庭と呼ばれる部位に、炎症が起きた状態。
鼻前庭は鼻毛が生えている部位で、不衛生な手で鼻先をこすったり、指先で鼻の穴をほじったり、鼻水をかみすぎたり、鼻毛を抜いたり、鼻毛を必要以上にカットすることで鼻前庭に傷ができ、鼻毛の毛根や皮脂腺(せん)、汗腺に細菌が感染すると、炎症が起きます。
鼻先や鼻前庭に症状が現れるのが特徴で、どちらかというと大人より子供に多くみられます。子供が頭や顔などにできているただれ物を触った指先で鼻の穴をいじると、鼻前庭にただれが飛び火します。
鼻前庭炎を起こす原因で最も多いのが、皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌による感染です。黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌は皮膚に常に一定量存在しており、鼻前庭にできた傷に感染して炎症を起こします。
鼻前庭炎を起こす、鼻先や鼻前庭に、はれ、痛み、かゆみが現れます。また、鼻前庭に、ただれ、ひび割れができたり、乾燥してかさぶたができることも多く、それが痛みやかゆみを助長することになり、かさぶたがはがれて出血すると、より症状が悪化します。
重症化すると、うみを持ったはれ物ができる鼻せつに発展し、鼻先や鼻前庭に、はれ、痛み、発赤が現れます。触ると、かなりの痛みが生じます。進行すると、うみが破れて出てくることもあり、それが原因で鼻詰まりを伴うこともあります。
症状が進行すると、皮膚の真皮の深いところから皮下脂肪組織にかけて化膿(かのう)性炎症を起こして蜂窩織炎(ほうかしきえん)を生じ、鼻の先端や、鼻の全体がはれることがあります。さらには、顔面蜂窩織炎を生じ、顔面まではれることもあります。
顔のこの部分の静脈は脳へとつながっているため、静脈を通って細菌が脳に広がると、退行性血栓動脈炎や続発性の海綿動脈洞血栓症などの頭蓋内合併症が起こることもあります。最悪の場合、増殖した細菌が血液中に入って敗血症を起こし、生命の危険を伴うこともあります。
また、糖尿病を発症していたり、免疫を低下させる疾患が潜在していると、繰り返し鼻せつを発症し、症状も重くなる傾向があります。
鼻がはれたら、余計に悪化するため、いじってはいけません。耳鼻咽喉(いんこう)科を受診し、適切な治療を受けるようにします。
鼻前庭炎の検査と診断と治療
耳鼻咽喉科の医師による診断では、鼻鏡で観察するとすぐに確定できます。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、ブドウ球菌に有効な抗生剤が入ったバシトラシン軟こうや、ムピロシン軟こうなどを塗布する薬物療法が基本となります。
痛みや炎症が強い場合は、抗生剤が入った軟こうを塗布するとともに、抗生剤を内服し、消炎鎮痛剤も合わせて内服します。
うみを持ったはれ物できる鼻せつに発展し、かなりの痛みが生じている場合は、メスで切開し、うみを出すこともあります。
鼻前庭炎の予防としては、鼻先を触る、鼻の穴をほじる、鼻毛を抜く、鼻の脂を絞るなど、鼻を刺激することを必要以上に行わないのが効果的です。鼻毛は抜かずにハサミで適当な長さに切り、鼻の穴をきれいにする際は直接指を突っ込むのではなく、ティッシュを使うようにします。
また、鼻の中にはもともと雑菌が多いため、小さな傷やはれ物ができた場合は、すぐに消毒することで重症化を防げます。
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