風呂のお湯などの温熱刺激が原因となって生ずるじんましん
温熱じんましんとは、風呂や暖房器具、ドライヤー、温かい飲食物などの温熱刺激によって生じる皮膚病。
症状は通常、温熱刺激が加わってから数分以内に現れ、数時間以内に消失します。
温熱刺激が加わってから通常数分以内に、強いかゆみを伴う皮膚の盛り上がりが生じます。かゆみや皮膚の変化は、数時間以内に治まることが多く認められます。
じんましんは、何らかの刺激によって皮膚の血管周辺にあるマスト細胞(肥満細胞)が刺激されて、細胞内に蓄えられているヒスタミンという化学物質が放出され、皮膚のはれや、かゆみ、湿疹(しっしん)ができる症状です。ヒスタミンには皮膚の血管を拡張させる作用があり、血管が拡張することで血液中の液体成分が血管の外に漏れ出し、これが皮膚を赤く盛り上げてはれとなるのです。ヒスタミンには、神経に作用してかゆみを引き起こす作用もあるため、赤いはれとともにかゆみも生じます。
マスト細胞が刺激される原因はさまざまですが、風呂のお湯に浸(つ)かったり、暖房器具に当たったりして、皮膚が急に激しい温度変化にさらされることも刺激になり、温熱じんましんが発生しやすくなります。
全身が冷え切った状態で、いきなり風呂のお湯に浸かると、皮膚表面の温度が急激に上がり、温熱じんましんが出やすくなります。風呂上がりに体が赤く、強いかゆみが出るという場合は、温熱じんましんが出ている可能性が高いといえます。
また、冬場に寒い屋外から戻って急に暖かい室内に入った時や、夏場にエアコンで冷えた室内から急に暑い屋外に出た時にも、温熱じんましんが出やすくなります。
温熱じんましんは、急に体が温まることが原因で起きるもので、空気が乾燥して皮膚のバリア機能が弱まり刺激を受けやすくなる冬場に、多くみられる疾患です。梅雨の時期から夏にかけて、みられるケースもあります。
寒い冬場は、暖房器具のすぐ近くで暖を取ることも珍しくありません。最近の暖房器具は、温風が出るものが多く、それが肌に当たるとその部分だけ急激に体温が上昇し、じんましんが出やすくなります。
温風だけでなく、赤外線電気こたつ、電気毛布、ホットカーペット、あんか、懐炉、ヒートパッド、火鉢、湯たんぽなどなど体に密着させて使う暖房器具でも、同じ状況が起きやすくなります。
運動後に、温熱じんましんが出る場合もあります。運動をすると体温が上がり、とりわけ冬場に運動をする前と運動をした後では、皮膚表面の温度が大きく変わり、温熱じんましんが出やすくなります。冬場に運動をすると体がかゆくなるという場合は、温熱じんましんが出ている可能性があります。
そのほかの温熱刺激物質としては、ドライヤー、日光、料理に伴う熱なども挙げられ、敏感な人ではホットコーヒーなど温かい飲食物を摂取した後にも、唇がはれるなど粘膜症状としてじんましんが出ることもあります。
温熱じんましんは誰でも発症する可能性がありますが、アレルギー体質の人や冷え性の人が特に発症しやすいといえます。アレルギー体質の人は、温熱じんましんの原因となるヒスタミンが出やすいためです。また、冷え性の人は、常に皮膚が冷えているので、ほかの人よりも低温でじんましんが出やすくなります。
このほかにも、乾燥肌、敏感肌の人も、温熱じんましんが出やすいといえます。
温熱じんましんはどの年代でも発症する可能性がありますが、乳幼児や高齢者に多い傾向があります。例えば、「赤ちゃんは冷やしてはいけない」とされるため、つい厚着をさせがちですが、体温調節がまだうまくできないので、温度差が激しい場所に行くと体温も変わりやすい結果、かゆみが出て激しくぐずることもあります。
また、高齢者の場合は、加齢から肌の温度調節がうまくいかず乾燥肌になりやすいため、温熱じんましんになりやすい状態です。
温熱じんましんでは、皮膚のはれや、かゆみ、湿疹、粘膜のはれなどが主な症状として現れます。局所的にできるものは、赤みやかゆみが強く、蚊が刺したように皮膚がプクッと膨らむ傾向があります。
かゆいからといって皮膚をかきむしると、それが刺激になってさらにじんましんが広がることもあります。
そのほかの症状として、全身倦怠(けんたい)感、頭痛、ふらつき、吐き気や嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、息苦しさなどが挙げられます。重症の場合には意識を失うこともあり、症状は個人によって大きく異なります。
温熱じんましんのほとんどは、花粉やハウスダストなどがアレルゲンとなって起こるアレルギー性ではなく、単に皮膚が刺激を受けたことによって起こる非アレルギー性であり、お湯に浸かったり、暖房器具に当たったりすれば必ず出るものではありません。ストレスがたまっていたり、抵抗力が弱っていたりすると、発生しやすくなります。
温熱じんましんは、日常のふとした切っ掛けで生じることがあるため、温熱刺激による異変を感じた場合や、風呂のお湯に浸かったり、体温が急激に上がったりするたびに、温熱じんましんが出るような場合は、一度、皮膚科ないし皮膚泌尿器科で詳しく皮膚の状態を診察してもらうことが大切です。
温熱じんましんの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、問診にて具体的な症状やそれまでの経過を確認します。
特に、入浴後やドライヤーの使用後、温かい飲食物の摂取後に症状が生じたなどの情報は重要で、じんましんの発症前の状況や症状の変化を具体的に伝えてもらいます。
温熱じんましんが疑われる場合には、実際に温熱刺激を皮膚に加え、その後の皮膚変化を医師が評価する検査を行うこともあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、じんましんが生じる原因となる温熱刺激をできるだけ避けることが重要です。また、かゆみの原因となるヒスタミンを抑えるための治療薬を処方します。抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬が中心ですが、かゆみが強い場合にはステロイド薬を併用することもあります。じんましんの症状が治まっても、薬の服用期間は厳守してもらいます。
主に内服薬を処方しますが、眠気や排尿障害などの副作用が生じることもあります。
温熱じんましんを繰り返す状態が続く場合は、抵抗力や免疫力を高めるために体質改善を視野に入れて、漢方薬を試してみるのもお勧めです。すぐに効果が現れなくても、指示された通りに根気よく治療を続けることによって、完治することもあります。
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