尿道の壁にほころびができ、尿が通過する際の圧力により、袋状の憩室が外側に突出する疾患
尿道憩室とは、尿道の内腔(ないくう)の壁の弱い部分が排尿の圧力によって膨らみ、袋状の憩室ができて外側に突出する疾患。
腎臓(じんぞう)で作られた尿は、腎盂(じんう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道と続く尿路を通って体の外に出ます、最終的な尿路である尿道の内腔の壁に、外側にまで通じる完全な穴ではなく、不完全なほころびができ、その弱くなった壁の一部が、排尿に際して内腔を通過する尿の圧力により、風船のように膨らんだ憩室として外側に向かって突出します。
尿道憩室には、先天性尿道憩室と後天性尿道憩室とがあります。
先天性尿道憩室は、生まれ付きの原因で発症します。症状が軽く、まれな前部尿道憩室と、症状が重い後部尿道憩室とがあり、いずれも男児に多くみられます。
外尿道口に近いほうにできた前部尿道憩室の場合は、息んでも尿が垂れるようにしか出ず、排尿後、尿道憩室にたまっていた尿が滴ることがあります。膀胱に近いほうにできた後部尿道憩室の場合は、高度の排尿困難がみられ、膀胱や腎臓が拡張していることもあります。
いずれの場合も、残尿が多くなるため、失禁、夜尿、繰り返す尿路の感染、発熱などの症状がみられます。
後天性尿道憩室は、20歳から40歳代の女性に多くみられます。出産による尿道損傷、尿道の周囲に存在する尿道腺(せん)の細菌感染、尿道狭窄(きょうさく)などが原因となって、後部尿道にできる憩室が多く認められます。
後天性尿道憩室を発症すると、排尿困難、排尿痛、尿が真っすぐに飛ばない尿線の異常などを起こします。排尿後、尿道憩室にたまっていた尿が滴ることがあります。陰部に痛みやはれを感じることもあります。
また、憩室内部には尿がたまりやすいので、細菌感染や結石、腫瘍(しゅよう)などが起こりやすくなります。細菌感染を起こして、憩室内部に膿(うみ)がたまると、排膿(はいのう)、膿尿、尿道痛などもみられ、憩室内に結石が形成されることもあります。尿が逆流することで膀胱炎を繰り返していると、腎盂炎、腎炎などの重篤な疾患になっていく可能性もあります。
尿道憩室の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、造影剤を膀胱内に注入し尿路を撮影する尿路造影検査や、柔軟性のある内視鏡を挿入して観察することで確定します。
結石や腫瘍があるのではと疑って検査した際に、尿道憩室が見付かることもあります。先天性尿道憩室のうちの後部尿道憩室の場合は、触診により膀胱や腎臓が拡張しているのがわかることがあります。
泌尿器科の医師による治療では、憩室が小さくて細菌感染を生じていない場合、放置して経過観察することもあります。細菌感染を生じている場合、抗生物質(抗生剤、抗菌剤)で炎症を鎮めます。
炎症を繰り返したり、憩室が大きい場合、内視鏡を尿道から入れて憩室を切除したり、開腹して憩室を切除する手術を行います。
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