網膜の血管の異常により血液から脂肪物質や水分が漏れ、網膜内や網膜下にたまる疾患
滲出(しんしゅつ)性網膜炎とは、眼球内の網膜の血管に異常が起きて、血液中の脂肪物質や水分が漏れ、網膜の中や網膜の下にたまる疾患。コーツ病とも呼ばれます。
原因は不明ですが、遺伝性要因はないとされ、全身の合併症はみられません。
2歳以降の小児や10歳以下の就学児に発症することが多く、主に男子の片目だけに発症することが多いのも特徴です。ただし、女子の発症や、両眼性の発症、成人になってからの発症がみられることもあります。
網膜の毛細血管が何らかの理由で拡張や蛇行をして、細い動静脈の拡張、毛細血管瘤(りゅう)の形成、血管の閉塞(へいそく)、出血、網膜のはれ、黄白色の滲出斑(はん)がみられます。脂肪物質や水分からなる黄白色の滲出物が網膜の下にたまると、網膜裂孔を伴わない滲出性網膜剥離(はくり)になります。
このような変化は通常、片目の眼底の周辺部から始まり、網膜の中心の黄斑部へとゆっくりと進行し、視力が低下したりや視野が狭くなります。変化が黄斑部に及ぶと、視力は極端に低下します。
さらに重症になると、滲出性網膜剥離が網膜全体に広がります。最終的に、網膜剥離が長引く、あるいは緑内障、硝子体(しょうしたい)出血、白内障を起こすなどの慢性の変化によって光覚を失うだけでなく、眼球が委縮することもあります。
片目が正常なことが多いために、小さな子供では視力の低下に気が付かずに、発見が遅れることがあります。片目の視力低下が長引くと斜視を起こすので、斜視によって疾患に気付くこともあります。
また、網膜剥離のために白色瞳孔(どうこう)となり、瞳孔の中にある白い部分が外から見ても光っていてわかることで、疾患に気付くこともあります。この白色瞳孔は、同じく子供の目の疾患である網膜芽細胞腫(しゅ)でも現れるので、区別をする必要があります。
進行した滲出性網膜炎のケースは治療が難しく、視力の低下が長期間続くと回復は困難。周囲が早めに疾患を見付けることが大切です。
滲出性網膜炎の検査と診断と治療
眼科、あるいは小児眼科の医師による診断では、眼底検査や蛍光眼底検査を行い、眼底の特徴ある黄白色の滲出性変化と網膜血管の異常によって確定します。滲出性網膜剥離のために白色瞳孔がある場合には、CT(コンピュータ断層撮影)、超音波診断、MRI(磁気共鳴映像法)などを行い、網膜芽細胞腫と鑑別します。
眼科、あるいは小児眼科の医師による治療では、初期で滲出斑や滲出性網膜剥離が軽症であれば、レーザー光凝固や冷凍凝固などで異常な血管を凝固して滲出性変化を抑制できる場合があります。あまりに進行してしまうと、レーザー凝固や冷凍凝固は効果がありません。滲出性網膜剥離を起こしている場合は、硝子体手術を行うことがあります。
治療で疾患が落ち着いても、成長とともに再発することがあるため、定期的に眼科などを受診する必要があります。
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