横隔膜を支配している神経のまひにより、呼吸困難が発生
横隔膜まひとは、横隔膜神経のまひにより横隔膜機能が弱まったり、消えた状態。横隔膜の疾患のうち、最も多くみられる疾患です。
横隔膜は、肺の下に位置していて胸腔(きょうくう)と腹腔を区切る膜で、上のほうは胸膜、下のほうは腹膜で覆われています。この筋肉層の丈夫なドーム状の膜である横隔膜の上下運動と、肋間(ろっかん)の呼吸筋の上下運動が協調して行われることによって、呼吸ができます。
左右一対の横隔膜神経は、頸部(けいぶ)、胸腔内と長い道筋を経て、横隔膜へと達しています。その経路が心臓手術などで切断されたり、多発神経炎、頸髄(けいずい)疾患、甲状腺(せん)や肺の腫瘍(しゅよう)による圧迫や浸潤によって遮断されたりすることで、横隔膜神経が圧迫を受け、まひします。
まひが起こるのは大抵、ドーム状になっている横隔膜が2カ所に隆起した部分を作っているうちの、どちらか1カ所です。まひの起こった横隔膜は、動かなくなり、緊張度を失って緩みます。この片側性の横隔膜まひがほとんどで、肺がんなどの腫瘍による横隔膜神経への浸潤が原因です。まれに、頸髄疾患によって両側性の横隔膜まひを起こすこともあります。
通常みられる片側だけのまひでは、呼吸困難も軽くてすみます。しかし、まひが左側の横隔膜の場合は、胃がねじれるため、消化不良が起こります。
両側まひでは、肺の換気容積が少なくなって著しい呼吸困難が発生します。特に、呼吸困難の症状は仰向けで強くなります。また、正常では吸気時に腹部は膨らむのと反対に、吸気時に腹部が陥没する奇異性呼吸がみられます。
横隔膜まひの検査と診断と治療
片側性の横隔膜まひは症状が軽いので、自分では気付きません。仰向けで強くなる呼吸困難を感じたら、両側性の横隔膜まひの可能性があるので、内科の専門医を受診します。
医師は胸部X線検査を行い、まひ側の横隔膜が持ち上がり、呼吸を行ってもほとんど動かないことによって診断します。
横隔膜まひは一時的なものと、永続的なものがあり、多発神経炎、頸髄疾患、肺がんなどの原因に応じて適切な治療が行われます。
両側性の横隔膜まひでは、人工呼吸が必要になります。近年では、鼻マスクによる非侵襲的陽圧呼吸療法も行われています。この呼吸療法がが気管内挿管に比べて優れているのは、話せること、飲み下しができること、 そして気管内挿管に伴うすべての合併症を回避できることです。
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