褐青色の色素斑が顎の下や首の回りに現れる皮膚の疾患
桜根母斑(さくらねぼはん)とは、顎(あご)の下や首の回りに現れる、境界の不明瞭な褐青色の色素斑。
母斑は、皮膚の一部分に色調や形状の異常が現れる状態で、あざとも呼ばれています。ほくろ(黒子)も母斑の一種で、その一番小さい型に相当します。
桜根母斑には、生後間もなく色素斑ができる早発型と、小児期や思春期に色素斑ができて徐々に拡大する遅発型の2種類があります。
色素斑は、顎の下や首の回りの淡褐色の皮膚の上に、濃青色から青みを帯びた小さな斑点がたくさん集まった状態で現れます。皮膚の表面は滑らかで、盛り上がったりしません。
原因は、メラノサイト(メラニン細胞、色素細胞)にあります。通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイトが、深い部分の真皮の上層に存在し増殖しているために、皮膚が褐青色に見えてしまいます。
通常、色素斑は大きさや状態が変化せず持続して存在し、自然に消えることはありませんが、悪性化を心配することもありません。
なお、同様の性状の色素斑が片側のまぶたから額、頬(ほお)にかけて現れるものを太田母斑と呼び、同様の性状の色素斑が肩から上腕に現れるものを伊藤母斑と呼びます。
桜根母斑の見た目が気になるようなら、カバーマークによる化粧で色を隠すのも選択肢の一つですが、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診し色素斑を除去することも勧められます。
桜根母斑の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科の医師による診断では、部位や色素斑の様子から視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮上層に色素含有メラノサイトが認められます。
また、蒙古(もうこ)斑が手足や顔、腹部、背中の上部、胸などに現れる異所性蒙古斑や、通常のほくろよりも全体に青色が強く、青色から黒色調に見えるタイプのあざである青色母斑などの皮膚疾患と鑑別します。
皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、色素斑を除去します。
Qスイッチレーザーには、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。特定のレーザー光線を照射すると、皮膚の中にあるメラニン色素に対してのみ反応するため、周辺の正常な皮膚組織へのダメージを極力抑えながら、色素斑の元になっているメラニン色素だけを破壊することができます。
いずれのレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行います。治療対象となる桜根母斑の色が濃く、範囲が広い場合は、1〜2回のレーザー照射だけは不十分で、およそ3カ月の間隔で、少なくとも5~6回の照射を行います。
治療時期は何歳からでも可能ですが、小児の場合は全身麻酔が必要なため3歳ごろから開始するのが普通で、早期から開始するほうが効果が高いといわれています。成人の場合でも、かなり色調が改善し、完全に色素斑を除去できることもあります。
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