まつげが内側に向き、眼球表面に触れている状態
逆さまつげとは、本来は外向きに生えているまつげが内向きに生えて、眼球の表面に触れている状態。まつげが角膜を刺激するため、目やにや涙が多くなり、目が充血します。
目の縁に沿って生えているまつげは、いわば目の門番。目にゴミや虫などが入ろうとすると、すぐに察知して、まぶたを閉じさせます。そのまつ毛が角膜側を向く原因には、まぶた自体が内向きにまくれ込んでいる眼瞼(がんけん)内反と、まぶたには問題はなく、毛根からのまつ毛の生え方がいびつで角膜側を向く睫毛乱生(しょうもうらんせい)とがあります。
眼瞼内反には、先天性のものと加齢性(老人性)のものが多く、いずれもまぶたの皮膚や皮下脂肪の過剰やたるみ、皮下の筋肉の筋力低下などによるものです。
先天性の眼瞼内反で、まぶたの内反の程度が軽く、皮膚などが過剰なため、まつ毛全体の生える方向全体が内向きである場合、特に睫毛内反と呼ぶことがあります。乳幼児、若年者に多くみられるのが、睫毛内反の特徴です。
乳幼児の場合、まぶたの特に下まぶたの脂肪が過剰なためにふっくらとしていて、まぶた自体が内側を向いているもので、小学校入学時までにその脂肪も成人とほぼ同じになり、自然にまぶたが外側を向いてきて、ほとんどの場合、自然に治癒します。
高齢者に多い加齢性(老人性)の眼瞼内反では、皮下脂肪が少なくなって、上まぶたがやせてたるんでくるために、まつげが内反することもよくあります。加齢によって涙の分泌も減っているため、目の症状が出やすいのが特徴です。
また、これらのほかに、炎症などの結果、まぶたが変形して起こる瘢痕(はんこん)性の逆さまつげや、まぶたがけいれんして起こる逆さまつげなどもあります。いずれも、一並びのまつ毛全体が角膜側を向くので、多くのまつ毛が角膜に当たることになります。
一方、睫毛乱生は眼瞼縁炎など、まつ毛の毛根部の炎症によって引き起こされることが多く、角膜に当たるまつ毛の数は1本のみの場合から多数の場合までいろいろです。
症状としては、幼児ではまばたきが多くて、目をよくこすったり、光をまぶしがったり、目やにや涙が多くなったり、目が充血したりします。生後間もない乳児では、まつげが細く軟らかいため、症状はあまり出てきません。小児、成人では、幼児の症状に加え、異物感、痛みなどが生じます。成長するとまつげが硬くなるため、角膜の傷がひどくなり、角膜が混濁して視力が低下してくる場合もあります。
逆さまつげの検査と診断と治療
涙や目やにが多いなど同様の症状でも、結膜炎、眼瞼縁炎などの場合もあるので、早めに専門医を受診して、原因をはっきりさせることが大切です。
眼科外来での診察では、まぶたの形状、まつ毛が角膜に接触していること、角膜の傷の程度などを診断します。常時まつ毛が角膜に接触している場合のほかに、眼球運動やまばたきの強さ次第で、まつ毛が角膜に接触する場合があります。
先天性の眼瞼内反、睫毛内反の場合、成長とともに1歳前後で自然に治ることが多いので、それまでは抗生物質入りの点眼液や眼軟膏(なんこう)を用いて眼球を保護し、様子をみるのが普通です。
2歳以上で治らない場合、さらなる成長に伴い自然治癒することも期待できますが、症状の強さ次第では手術を考えます。4~5歳になっても症状が軽減しない時などは、手術をします。
加齢性の眼瞼内反では、まつ毛を抜くと一時的に症状は改善しますが、再びまつ毛が生えると同じことの繰り返しになります。また、抜くにしても、一並びのまつ毛全体を抜く苦痛も決して軽くはありません。手術して治すほうが効果的です。
睫毛乱生でも、まつ毛を抜くと一時的に症状は改善しますが、まつ毛が生えるとやはり同じことの繰り返しです。抜く本数が少なくても、繰り返せば炎症を引き起こしたり、さらに太いまつ毛が生えてくる場合もあります。
きっちり治すには手術が必要で、まつ毛の毛根を電気の針で焼く睫毛電気分解や冷凍凝固、あるいは眼瞼内反手術に準じた手術などが行われます。簡単には治らない場合もあります。
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