2022/08/26

🇪🇨収縮期高血圧

60歳以上の高齢者に多くみられ、上の収縮期血圧が140mmHg以上と高い状態

収縮期高血圧とは、上と下に分かれている血圧のうち、上の収縮期血圧が140mmHg(ミリエイチジー、ミリ水銀柱)以上と高い状態。 孤立性収縮期高血圧とも呼ばれます。

血管壁に及ぼす血液の圧力であるところの血圧は上と下に分かれており、上は収縮期血圧(最大血圧、最高血圧)といい、下は拡張期血圧(最小血圧、最低血圧)といいます。正常血圧は、収縮期血圧が130mmHg未満、かつ拡張期血圧が85mmHg未満とされています。収縮期血圧が130〜139mmHg、かつ拡張期血圧が85〜89mmHgは、正常高値血圧とされています。

高血圧は、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上とされており、収縮期血圧と拡張期血圧の両方、あるいはどちらかの血圧が一定以上高い状態を指します。

両方の血圧が基準値以上に高い状態は、収縮期拡張期高血圧といいます。下の拡張期血圧は90mmHg未満と正常なのに、上の収縮期血圧が140mmHg以上と高い状態が、収縮期高血圧に相当し、60歳以上の高齢者に多くみられます。一方、上の収縮期血圧は140mmHg未満と正常なのに、下の拡張期血圧が90mmHg以上と高い状態は、拡張期高血圧といい、60歳以下の若年層にみられます。

血圧は寒暖、季節、精神活動、肉体活動などの変化によって容易に揺れ動きますが、全般的には年齢とともに上昇し、高齢者においては約3分の2の人が高血圧だといわれています。

そもそも収縮期血圧は、心臓から血液を体全体に送り出す状態を現し、収縮した心臓から血液が絞り出されることになりますから、大動脈が弾力を持って広がり、血液が勢いよく流れますので、血管壁に最も血液の圧力が加わっている時です。

逆に、拡張期血圧は、心臓が体全体に血液を送り出していない状態、つまり心臓に負荷がかからずに膨らんで、拡張している状態で、血液を動脈に送る準備をしている段階です。血液は心臓に集まっていることから、血管壁に最も血液の圧力が加わっていない時です。

年齢による血圧の変化は収縮期血圧と拡張期血圧で異なり、収縮期血圧は加齢とともに上昇を続けます。拡張期血圧のほうは50〜60歳くらいで最高となり、それ以降は低下し、高かった血圧が正常値になることもあります。

そのため、高齢者においては、収縮期血圧と拡張期血圧の差が大きくなり、収縮期高血圧の人が増加傾向にあるのです。この収縮期高血圧は、大きな血管の動脈硬化が進んだことを現しています。

収縮期高血圧では一般に自覚症状はない場合が多く、健康診断や病気で病院にいった時、たまたま血圧を測って発見されるというのが普通です。症状が現れやすいのは、血圧が高くなり始めた初期です。主な症状は、脳神経症状である頭痛、頭重(ずじゅう)感、めまい、耳鳴り、肩凝り、手足のしびれと、循環器症状である動悸(どうき)、脈の乱れ、心臓部の圧迫感などです。

これらの症状は、ある程度の期間、高血圧が持続すると、むしろ軽減するか、消失することが多いといえます。ところが、血圧の治療を受けずに放っておくと、高血圧が引き金となっていろいろな重大な疾患が起こってきます。例えば、いつもの血圧値より大幅に、しかも急激に血圧が上昇し、激しい頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、嘔吐(おうと)などに見舞われることがあります。高血圧性脳症といわれるもので、最高血圧は200mmHgを超えていることも少なくありません。

血圧の高い状態をそのまま放置すると、脳や心臓の合併症を起こし、この合併症によって死亡する頻度も高くなります。日本人の死亡原因の第1位はがんですが、第2位は心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの心臓病、第3位は脳出血や脳梗塞などの脳血管障害です。この第2位と第3位の疾患はいずれも、その原因に高血圧が大きく関与しているのです。

また、高血圧が長く続くと、腎(じん)臓の細い動脈に動脈硬化が起こって腎臓の機能が失われ、人工腎臓や腎臓移植を必要とすることもあります。動脈硬化は眼底の細動脈にも出現し、眼底出血を起こして突然目が見えなくなることも少なくありません。

そのため、収縮期高血圧を放置することは大変危険です。自覚症状はなくても、心臓や血管への悪影響を及ぼすことには変わりなく、血圧の上昇に気が付いた場合は、血圧測定を毎日の習慣にして、速やかに内科か循環器科を受診し、降圧治療を受けることが大切です。

収縮期高血圧の検査と診断と治療

内科、循環器科の医師による診断では、収縮期高血圧は主に動脈硬化が原因で起こるため、動脈硬化の進み具合を調べる血圧脈波検査を行います。

検査では、ベッドに横になった状態で、両手と両足首の4カ所にベルトを装着して、左右の上腕部と左右の足首の血圧を同時に測定します。所要時間は5分程度で、脈波伝播(でんぱ)速度、上腕と足首の血圧比の2つがすぐにわかります。

脈波伝播速度は、心臓から送り出された血液により生じた拍動が、血管を通じて手や足に届くまでの速度のことで、血管が硬いほど速くなります。上腕と足首の血圧比は、血管の詰まり具合を示す数値で、通常は足首の血圧は上腕よりもやや高いものですが、その数値が逆になっている場合は動脈が脂質などで詰まって、血流が悪くなっていることが疑われます。

拡張期高血圧と診断されれば、生活習慣のチェック、高脂血症や糖尿病などのほかの心血管危険因子の合併確認、二次性高血圧の精密検査、高血圧の影響を強く受ける心臓、脳、腎臓、目などの臓器の障害の程度を評価するための検査を行います。

内科や循環器科の医師による治療では、生活習慣改善と薬物療法の2本立てとなります。まず薬に頼らない生活習慣の改善が重要で、これだけで治療効果の上がらない場合に初めて、血圧を下げる降圧薬を使います。

生活習慣改善では、(1)食塩摂取の制限や適性体重の維持など食事療法、(2)ストレスの軽減や適度の運動など日常生活の改善、(3)禁煙や深酒の禁止など、嗜好(しこう)品の摂取の改善などを行います。

以上の療法を1カ月以上行ってもなお血圧値が高い場合に、降圧薬を処方します。高い血圧を下げるための降圧薬の進歩は目覚ましく、今日ではいろいろの種類のものが用いられ、血圧のコントロールは多くの場合、可能となっています。

しかし、降圧薬を内服しているからといって、生活習慣改善を軽んじることはできません。高血圧症治療はあくまでも食事療法と日常生活の改善などが中心であり、その効果を高めるために行われるのが薬物療法です。

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