腎臓から尿管に至る部位からの原因不明の出血の総称
本態性腎出血(ほんたいせいじんしゅっけつ)とは、腎臓から尿管に至る部位からの原因不明の出血。特発性腎出血とも呼ばれます。
本態性とは、原因が明らかではないという意味で、特発性とほぼ同義です。
目で見て明らかに赤い尿が出る肉眼的血尿が現れ、数時間から数日続きます。腎臓からの出血といっても、体内に血液がたまるわけではありません。一般に男性に多く、20〜30歳代の比較的若年者に多くみられます。
なお、ナットクラッカー(クルミ割り)現象による腎出血は、以前は本態性腎出血に含まれていましたが、左側の腎臓の静脈がそばの2本の動脈に圧迫されることで、静脈の流れが悪くなってうっ血が起こり、それが血尿の原因になると明らかになったため、現在では含まれません。
本態性腎出血も、何らかの原因で片側の腎臓内の微少な血管が破れ、軽いうっ血が起こることなどが原因と考えることもできます。
明らかな原因や誘因がなく、急に真っ赤な尿が現れるため、驚いてしまうことが多いようです。一度だけの場合もありますが、数日間続くこともあります。また、再発することもあります。
真っ赤な尿のすべてが、本態性腎出血ではありません。原因を特定できない本態性腎出血は、肉眼的血尿の発症者の約10人に1人にみられるだけです。
他の肉眼的血尿の原因となる疾患として、膀胱(ぼうこう)炎などの尿路感染症、尿管結石などの尿路結石症、膀胱がんなどの尿路悪性腫瘍(しゅよう)、急性糸球体(しきゅうたい)腎炎やIgA腎症などの糸球体腎炎、膀胱や尿道に異物が入って炎症を起こす尿路異物などが挙げられます。
また、健常者でも激しい運動後、一時的に肉眼的血尿を認めることがあります。いずれにおいても血尿が認められた時、特に持続したり、何度も再発したりする場合には、泌尿器科、ないし腎臓内科の医師の診断を受け、定期的に経過観察することが必要です。
本態性腎出血の検査と診断と治療
泌尿器科、腎臓内科の医師による診断では、まず他の原因による肉眼的血尿を除外します。具体的な検査としては、尿沈渣(ちんさ)、尿細胞診、尿細菌培養、超音波、CT、MRI、静脈性腎盂(じんう)造影(IVP)、膀胱鏡などを行います。他の原因を除外することにより、本態性腎出血と診断を確定します。
本態性腎出血と診断されたら、腎臓の働きに関しては正常で、健康人と何ら変わることはありません。また、貧血になったり、IgA腎症のように将来、腎臓の働きが悪くなるといった恐れはないのが普通です。
泌尿器科、腎臓内科の医師による治療では、薬物療法として、抗プラスミン薬などの止血薬を使用して、血尿を止めます。肉眼的血尿が持続する場合には、尿管カテーテルを用いて、1~3パーセントの硝酸銀を腎盂内へ注入して、出血している静脈を凝固させる治療を行うこともあります。
自然に治ることも多いものの、安静が第一です。肉眼的血尿が見られる間は、血尿を増やしてしまう恐れがある過労や風邪などに注意しながら、1日の平均的な成人の尿量である1~1・5リットルを保つために十分な水分補給を心掛けます。飲酒や激しい運動も、控えたほうがよいでしょう。
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