性腺刺激ホルモンの影響を受けずに性ホルモンの分泌が盛んになり、第二次性徴が早く起こる疾患
ゴナドトロピン非依存性思春期早発症とは、性腺(せいせん)刺激ホルモンであるゴナドトロピンの影響を受けることなく、早期に女性ホルモンまたは男性ホルモンの分泌が盛んになり、第二次性徴が早く起こる疾患。仮性思春期早発症、偽性思春期早発症、末梢(まっしょう)性思春期早発症とも呼ばれます。
ゴナドトロピン非依存性思春期早発症に対して、ゴナドトロピン依存性思春期早発症があります。
ゴナドトロピン依存性思春期早発症は、脳内視床下部よりも中枢にある成熟時計と呼ばれる体内時計により、視床下部からのゴナドトロピン放出ホルモンの分泌が高進し、これが下垂体(脳下垂体)からのゴナドトロピン(LHおよびFSH)の分泌を促進し、さらにこのゴナドトロピンが女性の性腺である卵巣からの女性ホルモンであるエストロジェンの分泌、男性の性腺である精巣( 睾丸〔こうがん〕)からの男性ホルモンであるテストステロンの分泌を促進することで引き起こされ、第二次性徴が早く起こる疾患を指します。
ゴナドトロピン非依存性思春期早発症の場合は、下垂体からのゴナドトロピンの分泌が抑制されているにもかかわらず、性腺である卵巣、精巣、または副腎(ふくじん)で性ホルモンがつくられて、第二次性徴が早く起こります。
副腎腫瘍(しゅよう)、卵巣腫瘍、精巣腫瘍、治療不十分な先天性副腎皮質過形成症、特殊な遺伝子異常によるマッキューン・オルブライト症候群、家族性男性性早熟症などが、その原因です。
女子では、乳房が少しでも膨らんできた時が思春期の開始ですが、この乳房の発育が7歳6カ月以前に起こった時、ゴナドトロピン非依存性思春期早発症の可能性が高いといえます。8歳より前に陰毛が生えてくる、10歳6カ月より前に月経が発来するなどの症状も認めます。
乳房発育だけがみられる時は、女性ホルモンの分泌の一過性の高進によると考えられる乳房早期発育症との区別が必要です。
男子では、精巣が4ミリリットル以上の大きさになった時が思春期の開始ですが、この精巣の発育が9歳未満で起こった時、ゴナドトロピン非依存性思春期早発症の可能性が非常に高いといえます。10歳より前に陰毛が生えてくる、11歳より前にひげが生えたり、声変わりするなどの症状も認めます。
女性ホルモンであるエストロジェン、または男性ホルモンであるテストステロンが早期に分泌されることにより、成長のスパート(急激な進行)が起こります。
未治療で放置すると、実際の年齢に対して、実際のその人の体の年齢を現す骨年齢が促進して、骨が成長する骨端(こったん)が早期に融合するため、一時的に身長が伸びた後、最終的に低身長で成長が終わります。
低年齢で乳房が大きくなってきた場合や、急に背が伸びてきた場合には、小児内分泌科などを受診することが勧められます。
ゴナドトロピン非依存性思春期早発症の検査と診断と治療
小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、問診でいつごろから、どのような症状が始まったかを聞き、視診と触診で全身および外性器の性成熟の状態をチェックします。
また、ホルモン検査で血液中の性ホルモンの分泌状態、腹部超音波(エコー)検査で副腎腫瘍や卵巣腫瘍、精巣腫瘍の有無を調べることもあります。手と手首のX線(レントゲン)検査を行い、骨年齢を判定して骨の成熟の有無を調べることもあります。
ホルモン検査では、性ホルモンの上昇は認められますが、性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの分泌は抑制されています。
小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による治療では、原因となる病変がある場合、それを治療します。先天性副腎皮質過形成症が原因であれば、副腎皮質ホルモンを投与します。
副腎腫瘍、卵巣腫瘍、精巣腫瘍などが原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出した後に、ホルモン剤を投与して症状を緩和します。腫瘍の摘出が不可能な場合には、化学療法や放射線療法も行います。
すでに起きている早発月経や陰茎発育などの症状については、特別な治療をせず、社会的心理的サポートを行います。
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