血栓症とは、血管の中にできる血の固まりである血栓が血管を詰まらせ、組織や臓器に障害を引き起こす病状です。
血栓は破れた血管を修復し、止血するために不可欠のもので、健康な場合は血栓を作る働きと、それを溶かす働きのバランスがとれています。まず、血管が傷付いて破れた際には、血液中の血小板がその傷口に集まり、止血します。 そこへフィブリンという血液中の繊維素が凝集して血栓となり、完全に止血します。続いて、血管壁細胞の増殖が起こって血管が修復され、その後、血栓を溶かす成分が働いて、血流が元通りになります。
しかし、加齢などで血栓を溶かす働きが衰えると、血栓が血管中に残ってしまい、動脈硬化で動脈が狭くなるなどの条件が重なることで血液の流れが滞ると、血栓症にかかりやすくなります。この血栓が心臓の血管をふさぐと心筋梗塞(こうそく)、脳の血管をふさぐと脳梗塞が起こります。ある部位にできた血栓がはがれて、血流に乗って移動し、他の部位の血管をふさぐと塞栓(そくせん)症が起こります。
日本人では、40歳代の5人に1人、50歳代で3人に1人、60歳代で2人に1人、70歳代ではほぼ全員血栓症であるといわれています。
血栓症を引き起こす要因となるのは、凝固しやすくなるなどの血液の性状変化、炎症や損傷などによる血管壁の変化、 血流のうっ滞、加齢による血管の老化、誤った食生活、運動不足、血中の中性脂肪やコレステロールの増加などが挙げられます。
医師による治療においては、脳血管障害や虚血性心疾患を起こす可能性のある人に対して、予防目的で抗血栓治療を行うことがあります。活発になっている凝固因子の働きを抑える抗凝固薬や 、血小板の働きを抑える抗血小板薬、血栓溶解薬などが使用されます。
それぞれの薬は、出血した際、血を止めるのに必要な血栓ができる過程も抑えますので、出血しやすい、また、出血した際に止まりにくいという副作用がありますので、注意する必要があります。
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