夜間や暗い場所で目がよく見えなくなる先天性夜盲のうち、進行しないタイプの総称
先天性停止性夜盲とは、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる先天性夜盲のうち、発症しても生涯進行しないタイプの総称。小口(おぐち)病、眼底白点症(白点状眼底)、狭義先天停止性夜盲症などを含みます。
夜盲症とも呼ばれ、俗に鳥目とも呼ばれる夜盲には、先天性夜盲と後天性夜盲があります。
先天性夜盲は遺伝性で、小口病のほか、眼底白点症(白点状眼底)、狭義先天停止性夜盲症、白点状網膜炎、網膜色素変性症などがあります。これらの先天性夜盲にはさらに、幼児期より徐々に発症して病状が進行する進行性夜盲と、発症しても生涯進行しない停止性夜盲とがあります。
一方、後天性夜盲は、ビタミンAの欠乏によって発症します。網膜にあって、夜間の視覚を担当するロドプシン(視紅)という物質が、ビタミンAと補体から形成されているため、ビタミンA不足は夜間視力の低下につながるのです。
後天性夜盲の場合は夜間や暗い場所で見づらくなることで気付きますが、先天性夜盲の場合は物心がつくころに気付くことが多く、生まれ付き視力障害が強い場合は、家族が気付いて眼科を受診することが多いようです。
先天性夜盲の一疾患であり、先天性停止性夜盲の一疾患でもある小口病は、小口氏病とも呼ばれ、1905年(明治38年)に、日本の眼科医である小口忠太が初めて報告しました。網膜のうちの弱い光を感ずる視細胞である杆体(かんたい)の機能不全による生まれ付きの夜盲のみが症状で、夜盲の程度は生涯進行しないとされており、明るい場所では視力、視野、色覚は通常正常といわれています。
遺伝形式は、常染色体劣性遺伝をとります。比較的まれな疾患ですが、日本では比較的多くみられ、夜間でも十分な明かりのある現代社会では、気付かずに生活していることもしばしばあります。
ただし、停止性と考えられていますが、50歳代以降で、ドーナツ状に見えない部分が生じる輪状暗点という視野障害を来す場合もみられます。
特徴は、はげかかった金箔(きんぱく)様と表現される特徴的な眼底の色調。眼科の医師が検眼鏡で調べると、眼底は汚い金箔様の色調を帯び、血管は赤黒く細く周辺部まで見えます。しかし、暗所に3〜4時間いると眼底の色調はすっかり消え、正常な色調に戻り、光覚もかなりよくなりますが、再び外に出ると、すぐに元通りになります。
眼底白点症(白点状眼底)は、網膜のうちの錐体杆体機能不全による夜盲で、眼底に無数の白点が散らばっているのが認められます。ほとんどは原因遺伝子RDH5の異常によって起こり、常染色体劣性遺伝形式をとります。
一般には、ある程度まで進むと停止するもので、夜盲の程度は生涯変わりませが、最近の研究では50歳を過ぎると錐体機能に影響する場合もあることがわかりました。
狭義先天停止性夜盲症は、網膜のうちの杆体のある部分の機能の欠落による夜盲で、極めてまれな疾患です。視野、色覚には異常がみられません。
生まれ付きの夜盲があるものの、進行しないため自分で気が付くことはまれで、5歳~10歳位で視力低下により眼科の医師に気付かれることがあります。眼底に異常は認めないため、全視野刺激網膜電図検査によってのみ診断可能となります。
遺伝形式は、X連鎖劣性遺伝を示すことが特に男児に多く、常染色体劣性遺伝を示すこともあります。
先天性停止性夜盲の検査と診断と治療
眼科の医師による診断では、視力検査、視野検査、暗順応検査(暗い場所で、どれだけ対応できるかを調べる検査)、網膜電位検査、眼底検査などを行い、どのタイプの夜盲であるのかを判定します。
小口病では、特異的な眼底所見、正常な視力、視野、色覚、網膜電位検査で正常な錐体細胞の反応と杆体細胞の反応低下を認めることで確定します。
現在のところ、小口病の有効な治療法はなく、暗順応を改善させる薬を内服したり、光刺激を防ぐ遮光眼鏡を使用したりといった程度にとどまります。しかし、視力低下、視野障害、色覚障害などは通常みられないため、予後は良好です。眼底白点症(白点状眼底)、狭義先天停止性夜盲症の場合も、同様です。
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