自覚症状に乏しく、徐々に視野が欠損するタイプの緑内障
開放隅角(ぐうかく)緑内障とは、眼球内での房水(ぼうすい)の流れが悪いために眼圧が上昇し、慢性的に視神経が圧迫されて、徐々に進行する緑内障。原発開放隅角緑内障とも呼ばれます。
眼球には、角膜や強膜でできた壁の内側に、眼内液である房水が入っていて、その壁の弾力と房水の充満状態によって、一定の硬さを保っています。この硬さが眼圧であり、正常眼圧は平均15mmHgと外気圧より高いことで、眼球の形を保っています。眼内を満たす房水は主に毛様体で作られて後房に分泌され、前房へ流れて水晶体や角膜に酸素や栄養を与え、前房隅角より出て静脈に戻ります。
ほとんどの緑内障は、前房隅角に問題があり、房水が流出しにくくなって眼圧が上昇します。この開放隅角緑内障では、前房隅角は広く開いているものの、それより先の部分の排水路である線維柱帯が目詰まりしているために、房水が流出しにくくなって眼圧が上昇します。線維柱帯が目詰まりする原因としては、コラーゲンや異常な蛋白(たんぱく)質の蓄積、線維柱帯を構成している細胞の減少などがいわれています。
開放隅角緑内障は、慢性緑内障の典型的な病型といえ、青そこひとも呼ばれる緑内障の約90パーセントを占めます。
目が重い、目が疲れやすい、肩が凝るなどの症状が出ることもありますが、多くはかなり進行するまで無症状です。気が付かないうちに徐々に視神経が侵され、中期〜末期になると視野欠損を自覚します。
視野の欠損の初めは、光の感度が落ちる程度で、いきなり黒い物が出現するわけではありません。また、両目で物を見る場合には脳が不具合を補正する両眼視機能が働くために、たとえ片方の目に開放隅角緑内障による視野の欠けがあったとしても、視野の欠けが消失してしまうのです。両眼視機能には視力を向上させる働きもあり、片目だけの時よりも、両目で見ると少し視力が上がるため、片目の視神経の50パーセントを失っても、まだ自覚症状がありません。
初期の視野欠損の段階では、視野の中心部分から欠けていくことは、まずありません。通常、中心の少し上あたりか、鼻側から欠けていき、次に、耳側のほうが欠けていきます。視野の中心部分は、網膜の黄班(おうはん)部や中心窩(か)に映っている映像で、黄斑部や中心窩は視神経の線維が強くできているためです。最終的には、中心部分だけが見えるため、まるで筒からのぞいているような見え方になります。
このまま何もせず開放隅角緑内障の症状を放置すると、失明することになりますが、検診で見付かるケースが多くみられます。
開放隅角緑内障の検査と診断と治療
開放隅角緑内障を予防する方法はないものの、視野が狭くなる、目が重い、目が疲れる、軽い頭痛がする、肩が凝るといった自覚症状があれば、眼科医の診察を受け、早期の治療で進行を食い止めます。
開放隅角緑内障では、眼圧検査で22mmHgを超えることがあること、視神経乳頭の検査で緑内障性の視神経乳頭の障害を認めること、視野検査で視野欠損を認めること、隅角検査で開放隅角であること、原因となるようなそのほかの目や全身の病気がないことが、診断基準になります。
開放隅角緑内障の治療では、まず薬物による眼圧下降が選択されます。点眼治療から開始し、効果が不十分な場合は内服薬、レーザー治療、手術と順次疾患の進行によって選択されます。点眼薬はまず1剤から開始し、眼圧下降の効果をみながら追加していき、次いで、炭素脱水酵素阻害剤を内服するようにします。
薬物、レーザー治療、手術治療を問わず、眼圧を10〜12mmHg程度にコントロールすることが、視野異常の進行を止めるのに効果的だとされています。
開放隅角緑内障は、慢性の進行性の疾患ですので、長期に渡って定期的な眼科受診が必要です。薬による治療はきちんと続ける必要がありますが、必要以上に気にしないことも大切。特に生活上の規制は必要ありません。
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