脊柱管内に発生し、良性腫瘍と悪性腫瘍の別
脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)とは、脊柱管内に発生する腫瘍。神経腫、髄膜腫などの良性腫瘍と、悪性腫瘍の神経膠腫(こうしゅ)(グリオーマ)がみられます。
組織の異常な増殖によるものですが、その原因が何かについては不明です。発生する頻度は10万人当たり1〜2人で、脳腫瘍の1/5~1/10程度と比較的まれです。
脊柱管は、頸(けい)骨から仙骨まで非常に長いので、その発生する部位によって症状はさまざまです。普通、腫瘍が発生した部位より下のほうの神経が、まひします。例えば、頸部に発生すれば手と足、胸部より下なら両側の足に、運動や感覚のまひが現れるのが、脳腫瘍と違った特徴です。
神経腫の場合なら、神経支配領域に一致した痛みがよく起こり、背中と手や足に放散する痛みが起こるのが、普通です。感覚の異常は、足のほうから徐々に上昇していきますが、進行すると失禁するようになります。
脊髄腫瘍の多くを占める良性腫瘍の場合は、数カ月から数年の経過で症状が進行します。悪性腫瘍の場合は、症状が早く進行します。
脊髄腫瘍の検査と診断と治療
症状や神経検査で脊髄腫瘍を疑った場合、MRI検査でほとんど診断することができます。ただし、MRIは通常、薬剤の注射が不要で痛みのない検査方法ですが、腫瘍と区別するために造影剤を少量静脈内に投与することがあります。
腫瘍が周囲の骨を壊したり、腫瘍自体に骨のような硬い組織を含む場合、あるいは脊椎(せきつい)から出た腫瘍を疑う場合には、CTスキャンや脊椎のレントゲン撮影を行います。腫瘍に血管が豊富に含まれている場合、あるいは腫瘍か血管由来の疾患か診断が難しい場合には、血管撮影を行います。
治療においては、良性腫瘍の場合には、手術で全摘出されれば脊髄機能に障害を残すことなく完全に治ります。摘出した腫瘍の病理標本で良性であることが確認されれば、放射線や薬物による治療は必要ありません。また、腫瘍が全摘出されれば、再発はまれです。
悪性腫瘍で脊髄内から出たものは、正常な脊髄構造との境界が不鮮明で、全摘出が困難な例もあります。残った腫瘍に対して、放射線照射や抗がん剤による化学療法を行うことがあります。これらの補助療法を追加しなければ、あるいは追加したとしても、発症者はいまだ短期で生命を奪われるのが実情です。
しかし、脊髄腫瘍の60〜70パーセントは、良性腫瘍です。
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