生まれ付きのもので、尿道口が陰茎の途中や陰嚢などにある状態
尿道下裂(かれつ)とは、尿道の出口が陰茎の先端になくて、陰茎の途中や陰嚢(いんのう)などにある状態。陰茎背面の包皮が過剰で、陰茎が下に向くことが多い先天的な尿道の奇形です。
尿道の出口の位置によって、会陰(えいん)、陰嚢(いんのう)に出口がある近位型、陰茎、冠状溝(かんじょうこう)、亀頭(きとう)に出口がある遠位型という分類や、上部型、中部型、下部型という分類があります。
発生頻度は軽症のものを含めると、男児出生300~500人に1人の頻度でみられ、近年は増加傾向にあります。明らかな遺伝性はわかっていませんが、父親や兄弟での家族内発生が認められます。
奇形の原因は、尿道が発達する段階で陰茎の腹側で尿道がうまくくっつかなかったことや、胎児の精巣が作り出すホルモンの異常、母親が妊娠中に受けたホルモンの影響などが考えられており、近年の増加は環境ホルモンの影響が疑われています。
胎生8~9週に尿道の原基となる溝ができ、9週ごろから胎児の精巣から分泌されるテストステロン(男性ホルモン)により陰茎と尿道の形成が進みます。この段階でホルモンの産生や作用の異常が起きると、うまく尿道が形成されなくなると考えられます。尿道が形成されなかった組織が、下への屈曲の原因になっています。
症状は、尿道の出口が正常の位置と違っているために、排尿する際に尿が飛び散ることです。奇形の程度が強い場合は、男児でありながら立小便ができないことがあります。陰茎が曲がっていることが多く、将来の性交渉の際に腟(ちつ)内に射精ができないこともあります。特殊な場合として、尿道の出口は正常で陰茎の屈曲だけがみられることもあります。
合併症として、尿道の出口が会陰、陰嚢に開く近位型では、停留精巣、矮小(わいしょう)陰茎、前立腺(せん)小室、二分陰嚢などが多いとされています。また、尿道の出口から包皮小体にかけて陰茎索といわれる結合組織束を伴うため、陰茎は腹側に湾曲することが認められます。
男児に尿道下裂の症状が認められた場合は、合併症の有無を含めて、早期に小児泌尿器科もしくは小児外科の医師に相談すべきです。停留精巣や陰嚢の発育不全を伴う場合には、性分化異常の可能性もあるので、染色体検査や精巣機能検査を行ったほうがよいとされています。
尿道下裂の検査と診断と治療
小児泌尿器科、小児外科の医師による診断では、従来から出生前環境因子、遺伝的要因が尿道下裂の発生に関係しているといわれているため、家族内発生の有無や母親が妊娠中にプロゲステロンなどのホルモン剤やアスピリン、インドメタシンなどの解熱薬を使用したかどうかを問診します。
家族内発生があった場合や、奇形の程度が高度な場合には、半陰陽と区別するために染色体検査、ホルモン検査、内性器と性腺の確認のために内視鏡検査を行います。
医師による治療では基本的に、ごく軽度の場合を除いて、手術による形成術が行われます。治療の目的は、正常な立位による排尿が行えることと、将来の性生活が支障なく行えることにあります。また、患児の男性としての自覚、精神発達に大きな影響を及ぼすため、機能だけでなく美容上の面からも満足するようにすべきです。
手術は通常、日本では1~3歳で行われますが、欧米では10カ月前後で行われています。1~2歳で亀頭、包皮の発育が十分であれば、対象になります。矮小陰茎では、テストステロン軟こうなどで陰茎の発育を促します。
形成術には、陰茎索の切除をまず行ってから形成術を行う二期手術と、一期的に行う手術とがあり、200以上の術式があるといわれています。奇形が高度な場合は二期手術をすることもありますが、近年は縫合糸、マイクロ機器の発達で一期手術が多く行われており、包皮を用いて尿の出口を新しく作り、曲がった陰茎をできるだけ真っすぐにし、必要な場合は亀頭の形成を行います。この形成術は非常に繊細なため、熟練した小児外科医が慎重かつ丁寧に行う必要があります。
手術後の合併症としては、尿道の途中から尿が漏れて皮膚と交通したり、新しくつないだ尿道が狭くなったり、陰茎が屈曲したりすることが起こりやすく、再度手術が必要になることも少なくありません。
生まれ付きテストステロン(男性ホルモン)が少ないため、手術後の思春期以降に陰茎が短いという訴えもみられます。この場合には、ホルモン療法を行うこともあります。
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