黄色い爪、体のむくみ、呼吸器の病変の3つを特徴とする全身疾患
黄色爪(おうしょくそう)症候群とは、黄色い爪(つめ)、体のむくみ、呼吸器の病変の3つを特徴とする全身疾患。
3つの特徴がすべて現れることは40パーセントから60パーセント程度にとどまり、黄色爪症候群と見なすには、少なくとも2つの特徴が現れることが必要とされています。
最も特徴的なのは、爪が黄色くなり、爪の成長速度が遅くなって爪が伸びなくなること。爪の成長速度は、正常の5分の1ないし10分の1になります。正常な爪は週に0・5~1・2ミリ成長しますが、週に0・2ミリ以下しか成長しません。
爪の甲を根元で固定している皮膚である後爪郭(こうそうかく)の炎症が起こることで、この部分のリンパ管の閉塞(へいそく)が増悪し、爪の根元を覆っている後爪郭が後退します。これにより爪の甲が肥厚し、爪の成長速度が遅くなるのです。
また、手足のリンパ管が何らかの原因で詰まり、そのために体がむくむリンパ管浮腫(ふしゅ)が80パーセントの発症者にみられ、むくみは下肢や顔面に目立ちます。
呼吸器の病変は、ほぼ60パーセントの発症者にみられます。うち、片側や両側の肺に水がたまる胸水貯留が最も多くみられ、腹腔(ふくくう)内に水がたまる腹水貯留や、心臓の周囲を取り囲む袋である心嚢(しんのう)と心臓の間に水がたまる心嚢水貯留がみられることもあります。
それ以外にも、糖尿病や内臓のがんなど種々の疾患を合併することがあります。
黄色爪症候群の原因は、まだはっきりとわかっていません。しかし、先天性のリンパ還流異常がベースにあり、後天的に感染などを契機としてリンパ液の還流量が増加し、還流障害が助長されることによって、リンパ管浮腫や胸水が現れると考えられています。
また、膠原(こうげん)病や腫瘍(しゅよう)随伴症候群といった疾患がもとで、黄色爪症候群が起こるケースもあります。
まれに生まれた時から、黄色爪症候群による体のむくみを生じることもありますが、多くは中年以降に発症します。発症の平均年齢は61歳、男女比はほぼ同等とされています。
黄色爪症候群の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲に黄色調の着色ないし変色を起こし得る外的物質や薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、確立されたものがないため、一般的に対症療法が行われます。ビオチンやビタミンEを含んだ飲み薬の内服、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射、抗生剤(抗生物質)のクラリスロマイシンの内服などが行われます。
黄色爪症候群での黄色爪の多くは10〜20年以上持続するため、根気強く治療しなくてはいけません。特に、肺や気管支にほかの疾患がある人は、黄色爪症候群の完治が難しくなります。
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