外的物質や薬剤、皮膚疾患、全身疾患などによって、爪の甲が黄色になる状態
黄色爪(おうしょくそう)とは、爪(つめ)の甲が黄色になる状態。
外的物質や薬剤などによる爪の甲の着色ないし変色により、爪は黄色になります。また、爪の甲の発育や成長を遅らせる皮膚疾患あるいは全身疾患によっても、爪は黄色になります。
外的物質としては、たばこや、爪を強化する爪硬化剤、爪に光沢や色をつけるネイルラッカーなどがあり、爪の甲の表面への染み込み具合により黄色調は異なります。
薬剤としては、抗生物質のテトラサイクリン、免疫抑制剤のDーペニシラミン、骨が壊れるのを防ぐビタミンD3などがあります。
皮膚疾患としては、乾癬(かんせん)、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症、円形脱毛症、爪の水虫である爪白癬(はくせん)、爪甲剥離(はくり)症などで、爪は黄色になります。
全身疾患としては、黄色爪症候群が最も多い疾患で、それ以外にも糖尿病、心不全、黄疸(おうだん)を示す高ビリルビン血症、柑皮(かんぴ)症、カロチン血症、気管支の疾患、胆汁の分泌障害、アミロイドーシス、シェーグレン症候群、エイズなどで、爪が黄色になることがあります。
爪の水虫である爪白癬では、色の変化として白く濁ることが最も多いものの、一部の爪がかなり濃い黄色になることもあります。1本の足指や手指の爪から始まってゆくことが多く、徐々に他の指に進んでゆくこともあります。全部の指の爪に色の変化が現れた場合でも、黄色調は一定ではありません。
これに対して、黄色爪症候群などの全身疾患によって黄色爪になる場合は、ほとんどすべての爪に色調の変化が同時に現れてきます。
黄色爪症候群は、黄色い爪、体のむくみ、呼吸器の病変の3つを特徴とする全身疾患。3つの特徴がすべて現れることは40パーセントから60パーセント程度にとどまり、黄色爪症候群と見なすには、少なくとも2つの特徴が現れることが必要とされています。
最も特徴的なのは、爪が黄色くなり、爪の成長速度が遅くなって爪が伸びなくなること。爪の成長速度は、正常の5分の1ないし10分の1になります。正常な爪は週に0・5~1・2ミリ成長しますが、週に0・2ミリ以下しか成長しません。
爪の甲を根元で固定している皮膚である後爪郭(こうそうかく)の炎症が起こることで、この部分のリンパ管の閉塞(へいそく)が増悪し、爪の根元を覆っている後爪郭が後退します。これにより爪の甲が肥厚し、爪の成長速度が遅くなるのです。
また、手足のリンパ管が何らかの原因で詰まり、そのために体がむくむリンパ管浮腫(ふしゅ)が80パーセントの発症者にみられ、むくみは下肢や顔面に目立ちます。
呼吸器の病変は、ほぼ60パーセントの発症者にみられます。うち、片側や両側の肺に水がたまる胸水貯留が最も多くみられ、腹腔(ふくくう)内に水がたまる腹水貯留や、心臓の周囲を取り囲む袋である心嚢(しんのう)と心臓の間に水がたまる心嚢水貯留がみられることもあります。
それ以外にも、糖尿病や内臓のがんなど種々の疾患を合併することがあります。
黄色爪症候群の原因は、まだはっきりとわかっていません。しかし、先天性のリンパ還流異常がベースにあり、後天的に感染などを契機としてリンパ液の還流量が増加し、還流障害が助長されることによって、リンパ管浮腫や胸水が現れると考えられています。
また、膠原(こうげん)病や腫瘍(しゅよう)随伴症候群といった疾患がもとで、黄色爪症候群が起こるケースもあります。テトラサイクリン、D‐ペニシラミンなどの薬剤に誘発されて、黄色爪症候群が起こるケースもあります。
まれに生まれた時から、黄色爪症候群による体のむくみを生じることもありますが、多くは中年以降に発症します。発症の平均年齢は61歳、男女比はほぼ同等とされています。
黄色爪の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲に黄色調の着色ないし変色を起こし得る外的物質や薬剤、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、確立されたものがないため、一般的に対症療法が行われます。ビオチンやビタミンEを含んだ飲み薬の内服、ビタミンE製剤の外用、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射、抗生物質のクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)の内服、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)の内服などが行われます。
黄色爪症候群での黄色爪の多くは10〜20年以上持続するため、根気強く治療しなくてはいけません。特に、肺や気管支にほかの疾患がある人は、黄色爪症候群の完治が難しくなります。
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