2022/08/18

🇬🇫肘関節脱臼

肘の関節が外れ、肘関節を構成する骨同士の関節面が正しい位置関係を失った状態

肘関節脱臼(ちゅうかんせつだっきゅう)とは、外力が働くことによって、肘(ひじ)の関節を構成する骨同士の関節面が正しい位置関係を失った状態。いわゆる肘の関節が外れた状態のことです。

肘関節の脱臼は、人体に起こる脱臼の中では、肩関節の脱臼に次いで多く起こっています。

肘関節は、上腕骨と、2本の前腕骨である橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃくこつ)とで形成される関節で、上腕骨の内側の滑車という部分と、尺骨の肘頭や滑車切痕(せっこん)というくぼんだ部分とが強く絡み合って、肘の曲げ伸ばしの運動を行っています。

この肘関節全体は、関節包という靱帯(じんたい)状の線維で覆われており、さらにその上に内側側副(ないそくそくふく)靱帯、外側側副(がいそくそくふく)靱帯、そして橈骨輪状靱帯などが補強しています。

これらの軟部組織が骨を支える力が弱いために、転倒などに際して外力が働くことによって、肘関節の脱臼が起こりやすくなっています。特に、骨自体がまだしっかりしていない子供に多くみられます。

脱臼した後、前腕骨の肘に近いほうの端が前方(内側)に動いているか、後方(外側)に動いているかによって、前方脱臼、後方脱臼に分類されます。より多く起こっているのは肘関節後方脱臼で、肘関節の後方(外側)のほうが前方(内側)よりも、肘を曲げ伸ばしする時の力に対する抵抗力が強く、通常やや反り返る程度まで伸展できることがあだとなっています。

肘関節後方脱臼は、肘を伸ばした状態で手を突いて転倒し、さらに前腕が外側にねじられるような形になった際に、肘が過伸展されることにより、骨が関節包を突き破って起こります。

転倒によるほか、柔道やレスリングなどの格闘技において、手を突いた際や、腕の固め技である腕ひしぎ十字固め、アームロックを受けた際、あるいは交通事故などによる外傷でも、後方脱臼は起こります。

肘関節後方脱臼が起こると、ほとんどの場合、痛みが生じるとともに肘の曲げ伸ばしができなくなります。外見上も肘の変形が明らかで、脱臼した直後には、骨が関節包を突き破って後方(外側)に飛び出している部分がはっきりとわかりますが、はれが次第に大きくなるので、飛び出している部分がわかりにくくなります。

場合によっては、尺骨神経まひを合併することもあります。血管損傷を合併することはめったにありませんが、すぐに整復しないとフォルクマン拘縮を起こすことがあります。骨折の合併がある場合は、尺骨の鉤状(こうじょう)突起、橈骨頭部分の骨折を起こしやすく、たまに上腕骨内側上顆(ないそくじょうか)、外側上顆(がいそくじょうか)なども骨折することがあります。

一方、肘関節前方脱臼は極めてまれに起こり、例えば自動車の運転中に肘を曲げた状態で窓にかけていて、外の物に肘をぶつけた際に、起こります。多くの場合は、尺骨の肘頭骨折も合併します。

肘関節前方脱臼を起こすと、前腕骨の肘に近いほうの端が前方(内側)に動いて、肘を触った時に尺骨の肘頭ではなく上腕骨の先端が飛び出していることがわかります。

転倒や事故による受傷後、肘関節の明らかな変形が認められる場合は、骨折も疑い、アイシングと固定を行い,速やかに整形外科を受診することが勧められます。

肘関節脱臼の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、受傷時の状況と、肘の症状から、肘関節脱臼を疑います。脱臼と骨折の判別のために、異なった2方向から撮影するX線(レントゲン)検査を行うこともあります。

必要に応じて、他のX線撮影や関節造影検査(アルトログラフィー)、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査を追加し、関節包や靱帯、筋肉、骨軟部組織の損傷程度を調べることもあります。

整形外科の医師による治療では、まず、脱臼した骨を素手で元の位置に戻す徒手整復を試みます。

肘関節後方脱臼の場合、肘関節を軽く屈曲して、前腕を後方に押し下げながら牽引(けんいん)すると、通常は簡単に整復されます。その後、肘関節の安定性をチェックし安定している場合は、肘関節を曲げた状態でギプス固定をします。通常、1~3週間程度で完治します。

整復されても、すぐに再脱臼を起こすような場合は、肘関節の広範囲な靭帯損傷などが疑われます。このような場合、少し長めに2〜3週間程度のギプス固定を行うことで回復することもありますが、手術で靭帯の縫合が必要なこともあります。

手術には、関節鏡視下手術と通常の直視下手術があります。関節鏡視下手術のほうが体に負担がかからず、手術後の痛みが少ないために普及してきています。いずれの手術でも、はがれたり切れたりした靱帯や関節包などの軟部組織を元の位置に縫い付ける方法や、骨や腱で補強する方法などがあります。

肘関節前方脱臼の場合、腕を長軸方向に牽引し、前腕骨の肘に近いほうの端を後方へ押して整復します。その後、尺骨の肘頭骨折を合併しているケースでは、動揺関節や可動域制限などの後遺症を残すこともあるため、手術を行います。

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