気道と肺胞の境界に当たる呼吸細気管支を中心に、慢性の炎症が発生
びまん性汎(はん)細気管支炎とは、気管支末梢(まっしょう)部の細気管支が枝分かれして、肺胞につながる部分の呼吸細気管支が侵される疾患。呼吸細気管支の病変が両方の肺の全体に広がって、強い呼吸器障害を起こします。
この疾患は近年になって、慢性気管支炎や気管支拡張症とは別個の1つの疾患として扱われるようになりました。明らかな原因は、不明です。原因としては、発症者のほとんどが慢性副鼻腔(びくう)炎(蓄膿〔ちくのう〕症)を合併しており、欧米に少なく、日本、韓国、中国などアジアに多いことなどから、気道の防御機構に関連する遺伝子や体質的要因の関与が考えられています。
男女差はほとんどなく、発症年齢は40~50歳代をピークとして、若年者から高齢者まで各年代層に渡ります。喫煙とは特に関係はありません。
主な症状は、せき、たん、運動時の息切れで、ゼーゼーする喘鳴(ぜんめい)音が聞こえることも多くみられます。初期には、たんの量は少ないものの、時に細菌感染が加わると、たんの量が増え、黄色から緑色の膿性(のうせい)になります。
症状が進行すると、さらにたんの量が増加し、安静にしている時にも息切れが出現するようになり、呼吸不全になることもあります。重症になると、頭痛や不眠を覚え、心不全を合併すると1分間の脈拍数が100以上になる頻脈になり、尿の量が減って、脚の裏にむくみが現れます。
びまん性汎細気管支炎の検査と診断と治療
特に慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を持つ人で、せきや膿性のたんが長く続く場合は、びまん性汎細気管支炎の可能性があるので、呼吸器内科、呼吸器科の専門医を受診します。
肺機能検査(スパイロメトリー)では、1秒率(全体呼気量に対する1秒量の比率)が70パーセント未満の気流制限が認められます。低酸素血症は比較的早くから認められ、重症になると高二酸化炭素血症を伴います。血液検査では、白血球の増加、CRPの陽性がしばしば認められ、寒冷凝集素値の持続高値が高い頻度で認められます。
胸部X線写真では、肺の過膨張とびまん性の小粒状影が認められます。症状が進行すると、気管支拡張や輪状陰影、線維化陰影も認められます。胸部CT検査では、びまん性の粒状影、分岐した線状陰影、気道の壁の肥厚や拡張像がはっきりと描き出され、診断上重要です。
喀(かく)たん検査では、初期〜中期にはインフルエンザ桿菌(かんきん)や肺炎球菌が検出されますが、進行すると緑膿菌が検出されます。たんが多く、喘鳴音も現れることがあるため、気管支喘息との鑑別が紛らわしい場合があります。
治療には、抗菌薬の一種であるエリスロマイシンの少量、長期療法が行われます。以前は、慢性気道感染により呼吸不全が進行し予後不良となることが多かったのですが、 1985年以降、エリスロマイシンなどの14員環系(いんかんけい)マクロライド薬の少量、長期療法が登場したことで、生命予後は著しく改善されています。
エリスロマイシンが効かない場合には、クラリスロマイシンなどの他の14員環系マクロライド薬が有効な場合もあります。いずれも、気道炎症を改善させる効果を目的に使用されます。
せき、たんや、気道のけいれんに対しては、喀たん調整薬の投与やネブライザーなどによる吸入療法、ベータ刺激薬、キサンチン製剤などの気管支拡張薬が使用されます。たんが非常に多い場合は、体位ドレナージやタッピングなどにより、たんの排出を促すことも重要です。気道感染に対しては、ベータラクタム薬やニューキノロン系抗菌薬、抗緑膿菌抗菌薬などが使用されます。
また、症状が進行して呼吸不全になった場合には、長期在宅酸素療法が行われます。
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