2022/08/27

🇷🇼高血圧症

高血圧のためにいろいろな症状が現れてくる状態

 高血圧症とは、血圧の値が高いためにいろいろな症状が現れてくる状態。高血圧とは、最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧)の両方、あるいはいずれかの血圧が一定以上高い場合を指します。

 血管壁に及ぼす血液の圧力であるところの血圧は、寒暖、季節、精神活動、肉体活動などの変化によって容易に揺れ動きます。そのため、医師が高血圧と診断するには、「いつ血圧を測っても高い」ことを証明する必要があります。初めて来院した発症者が高血圧の範囲に入る血圧値を示したとしても、すぐには降圧薬を出しません。日を変えて何回か血圧を測定し、いつも最低血圧が90mmHg以上、あるいは最高血圧が140mmHg以上であることを、高血圧の診断目安としています。

 高血圧の血圧値の基準は、しばしばガイドラインで示され、世界共通に用いられています。この現在の基準によると、正常血圧は最高血圧が120mmHg未満、かつ最低血圧が80mmHg未満とされています。120〜139/80〜89mmHgは、高血圧前状態と定義されています。

 高血圧では一般に自覚症状はない場合が多く、健康診断や病気で病院に行った時、たまたま血圧を測って発見されるというのが普通です。症状が現れやすいのは、血圧が高くなり始めた初期です。主な症状は、脳神経症状である頭痛、頭重(ずじゅう)感、めまい、耳鳴り、肩凝り、手足のしびれと、循環器症状である動悸(どうき)、脈の乱れ、心臓部の圧迫感などです。

これらの症状は、ある程度の期間、高血圧が持続すると、むしろ軽減するか、消失することが多いといえます。ところが、血圧の治療を受けずに放っておくと、高血圧が引き金となっていろいろな重大な疾患が起こってきます。例えば、いつもの血圧値より大幅に、しかも急激に血圧が上昇し、激しい頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気、嘔吐(おうと)などに見舞われることがあります。高血圧性脳症といわれるもので、最高血圧は200mmHgを超えていることも少なくありません。

 血圧の高い状態をそのまま放置すると、脳や心臓の合併症を起こし、この合併症によって死亡する頻度も高くなります。日本人の死亡原因の第1位はがんですが、第2位は心筋梗塞(こうそく)や狭心症などの心臓病、第3位は脳出血や脳梗塞などの脳血管障害です。この第2位と第3位の疾患はいずれも、その原因に高血圧が大きく関与しているのです。

 また、高血圧が長く続くと、腎(じん)臓の細い動脈に動脈硬化が起こって腎臓の機能が失われ、人工腎臓や腎臓移植を必要とすることもあります。動脈硬化は眼底の細動脈にも出現し、眼底出血を起こして突然目が見えなくなることも少なくありません。

 現在の日本では、約3000万人が高血圧症にかかっていると見なされています。成人男性の約45パーセント、成人女性の約35パーセントは高血圧症で、年齢とともに罹患(りかん)率は上昇しています。

 なお、高血圧には大きく分けて、本態性高血圧と二次性高血圧といわれる2つのタイプがあります。90パーセント程度が原因となる疾患がない本態性高血圧で、残りの約10パーセントが何らかの原因で高血圧になっている二次性高血圧です。

 本態性高血圧は、生活習慣の乱れや遺伝素因、加齢などが相互に関連し合って発症すると考えられています。通常、30歳代の後半、ないし40歳代に始まり、10年以上の長い経過をたどって心血管臓器の障害を来し、合併症を起こしてくるものです。

 二次性高血圧は、腎臓の疾患によって起こるものが最も多く、急性腎炎、慢性腎炎、糖尿病性腎症などによるものが挙げられます。さらに、腎血管性高血圧、腎実質性高血圧、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫(しゅ)、クッシング症候群、大動脈炎症候群、大動脈縮窄(しゅくさく)症などによるものがあります。二次性高血圧では、原因により特徴的な症状を示すものもあります。

高血圧症の検査と診断と治療

 高血圧症を予防ためには、症状がないからといってそのままにしておかず、血圧を時々でもよいので測るということが大切です。最近は、簡便な自動血圧測定器が市販されていますから、家庭でも血圧測定が可能になっています。健康診断などで高血圧の指摘を受けたり、自己測定した血圧値がガイドラインの高血圧の範囲に入るなら、循環器専門医の診察を受け、高血圧の重症度判定、鑑別診断、治療方針決定などについて相談することです。

 なお、自己測定する場合は、測定精度の面から上腕にカフを巻いて測定できる血圧計が勧められます。自己の測定値は、診察室での測定より低めになる傾向があります。広く合意された家庭血圧の基準はありませんが、135/85mmHg以上は高いと考えるべきです。

 医師による高血圧症の検査と診断では、正確な血圧測定のためには、水銀血圧計を用いて聴診法で測定します。最低5分間、座位安静にして足を床に置き、腕を心臓の高さに保って測定します。高血圧と診断されれば、生活習慣のチェック、高脂血症や糖尿病などの他の心血管危険因子の合併確認、二次性高血圧の精密検査、高血圧の影響を強く受ける心臓、脳、腎臓、目などの臓器の障害の程度を評価するための検査が行われます。これらの評価は、治療方針を決める上で非常に重要です。

 医師による本態性高血圧の治療では、生活習慣改善と薬物療法の2本立てとなります。まず薬に頼らない生活習慣の改善が重要で、これだけで治療効果の上がらない場合に初めて降圧薬を使います。二次性高血圧の場合は、高血圧の原因となる疾患を治すことが主体になります。

 生活習慣改善では、(1)食塩摂取の制限や肥満の解消など食事療法、(2)ストレスの軽減や適度の運動など日常生活の改善、(3)禁煙や深酒の禁止など、嗜好(しこう)品の摂取の改善などを行います。

 以上の療法を1カ月以上行ってもなお血圧値が高い場合に、降圧薬が処方されます。高い血圧を下げるための降圧薬の進歩は目覚ましく、今日ではいろいろの種類のものが用いられ、血圧のコントロールは多くの場合、可能となっています。

 しかし、降圧薬を内服しているからといって、生活習慣改善を軽んじることはできません。高血圧症治療はあくまでも食事療法と日常生活の改善などが中心であり、その効果を高めるために行われるのが薬物療法です。一般に降圧薬は長期に服用し続ける必要があり、発症者と高血圧症との戦いは短期決戦ではなく、長い長い戦いです。その戦いに勝つか負けるかは、発症者自身の生活態度にかかっているといっても過言ではありません。

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