首や頭に向かう動脈に炎症が起こる疾患
巨細胞性動脈炎とは、頸(けい)動脈とその分枝の動脈、特に側頭動脈に炎症が起こる血管炎。疾患で障害された血管に、巨細胞という特徴ある細胞が認められ、側頭(そくとう)動脈炎とも呼ばれます。
高齢者にみられ、50歳以上で発症し60〜70歳代にピークがあります。日本では比較的まれな疾患で、欧米の白人に多いことが知られています。
側頭部の皮下を走っている側頭動脈などに炎症が起こる原因は、まだわかっていません。遺伝病ではありません。特定疾患(難病)の1つに指定されていますが、発症者への医療費給付は行われていません。
片側または両側の側頭部に、脈拍に合わせたズキズキする頭痛を自覚するようになり、こめかみの血管がはれて痛みます。場合によっては、食事をする時に、あごの関節や舌、口の回りに痛みが起ることがあります。それらの部位に行く動脈の流れが悪くなったためで、夜間に悪化しやすいことが知られています。典型的な場合には、側頭部に発赤を認め、ヒモのように細長い形態に肥厚した側頭動脈が触れます。
また、発症者の半数に、全身の筋肉痛や朝のこわばりなど、リウマチ性多発筋痛症に似た症状がみられます。巨細胞性動脈炎とリウマチ性多発筋痛症の両者は、極めて近似した疾患と考えられています。
そのほか、発熱や倦怠(けんたい)感、食欲不振などの全身症状もあります。目の血管に炎症が及ぶと、視力障害を起こし、時に失明することさえあります。大動脈にも障害が起こることがあり、間欠性跛行(はこう)、解離性大動脈瘤(りゅう)などをみることがあります。
巨細胞性動脈炎の検査と診断と治療
強い頭痛を感じたら、早めに神経内科あるいは脳外科の専門医の診察を受け、診断を確実にして、早期から適切な治療を受けるようにします。
血液検査では、血沈が著しく高進していることが多くみられます。血管撮影では、頸動脈系に狭窄(きょうさく)、閉鎖などを認めます。診断を確実にするには、側頭動脈の組織を取って調べる生検により、巨細胞を含む肉芽腫(にくげしゅ)を認めることが必要になります。
治療には、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)が用いられます。このステロイド療法により、視力障害までの進行が予防できます。失明の恐れがある場合には、大量の薬剤による治療が必要となります。その後、薬剤を次第に減らしていきます。
ステロイド療法で十分に血管の炎症が抑えられない場合や、薬剤の漸減に伴って血管の炎症が再燃する場合には、免疫抑制剤を併用することがあります。一般に予後は良好ですが、治療を開始した時期、病状の広がりによって、その経過はさまざまです。
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