皮膚の傷が治る過程で、本来は傷を埋めるための組織が増殖して、しこりになったもの
ケロイドとは、傷が治る過程において、本来は傷を埋めるための組織が過剰に増殖し、皮膚が赤く盛り上がってしこりになったもの。蟹足腫(かいそくしゅ)とも呼ばれます。
ケロイドの症状は肥厚性瘢痕(はんこん)に似ていますが、組織の過剰増殖が一時的で、傷の範囲内に限られるものを肥厚性瘢痕といい、ゆっくりしながらも持続的、進行性で傷の範囲を超えて周囲に拡大するものがケロイドに相当します。
ケロイドには生まれ付きの体質的な素因も大きく影響するといわれており、本来は体を修復する機能が働いて小さな白い傷で治るはずのものが、その治る途中で組織の過剰な生体反応が起こるために、皮膚の赤く硬い状態が長く続き、徐々に赤みや硬さが強くなっていきます。蟹足腫とも呼ばれるように、しばしば皮膚の緊張する方向に蟹(かに)の足のような形状の突起を生じて広がり、大きくなっていきます。
病変部の拡大とともに、中心部はしばしば赤みが少なくなって平らになりますが、元通りの皮膚には戻りません。痛み、かゆみも伴います。
一説には、皮膚の表皮の下にある真皮を作る線維芽細胞が、コラーゲンを過剰に分泌するためにケロイドを生じると考えられていますが、詳しい原因はよくわかっていません。
帝王切開などの手術やけがの跡のほか、ピアスの穴、にきびの跡、BCG予防接種の跡、本人が気付かないような小さな傷跡から生じます。また、傷跡のないところにもできて大きくなる真性ケロイドというものもあり、あご、前胸部、肩部、上腕の外側、上背部、恥骨(ちこつ)部など、皮膚が引っ張られる部位によく発生します。同じ人でも、ケロイドを生じやすい部位と生じにくい部位とがあります。
ケロイドの見た目が気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師を受診し、病変部の大きさや時期に適した治療を受けることが勧められます。
ケロイドの検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、通常、見た目だけで確定できます。ほかの疾患、特に悪性腫瘍(しゅよう)などの可能性を捨て切れない際には、組織の一部を採取して検査します。
皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、圧迫療法、薬物治療、外科的治療が主となります。
圧迫療法は、スポンジ、シリコンゲルシート・クッションなどを病変部に当て、サポーター、包帯、粘着テープなどで圧迫する方法です。手術後や外傷では、傷が治ったら早いうちに圧迫療法で傷跡のケアをすると、ケロイドになる率を低く抑えることができます。
薬物治療としては、ステロイド軟こう(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン軟こう)を病変部に塗ったり、ステロイド剤を病変部に直接注射する方法が効果的です。トラニラストという抗アレルギー剤の内服が行われることもあります。
外科的治療は、ケロイドの厚みがあり大きい場合に有効です。ケロイドは引っ張られる力により悪化するため、ケロイド部分を切除し、皮膚をZ字のようにジグザグに縫い合わせると、引っ張られる力を分散させることができます。
切除後は早期から、再発を防ぐための放射線治療を行う必要があります。コラーゲンが異常に増えて再発するのを抑えるため、数日間に分けて放射線の一種、電子線を当てます。医療機関によっては、切除後早期から、ステロイド剤を病変部に直接注射することもあります。
その後、半年から1年間は傷に力が入らないような生活を心掛け、粘着テープを張るなどして皮膚を圧迫します。この方法で8〜9割は治るとされています。しかし、運動や仕事を切っ掛けに再発する例もあり、しばらく安静な生活を送る必要があります。
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