2022/08/08

🇺🇬ケトン性低血糖症

乳幼児の血糖値が低下し神経症状が現れる疾患

ケトン性低血糖症とは、乳幼児の血液に含まれる糖(ブドウ糖)の量、すなわち血糖値が40mg/dl以下に低下し、交感神経症状が現れる疾患。

血液に含まれる糖は、生きるために欠かせないエネルギー源。生後1年から1年半の乳児の血糖値は80~100mg/dl、満1歳から満6歳の幼児の空腹時の血糖値は70~100mg/dlが正常値と見なされています。しかし、乳幼児は大人よりも血糖値が変動しやすいのが特徴で、低血糖になりやすい傾向にあります。

食べた糖質(炭水化物)をビタミンB1がブドウ糖に変えて血液中に放出されることで、血糖値は上がります。血液中のブドウ糖をエネルギー源として脳や筋肉が活動できるわけで、糖質はゆっくりとブドウ糖に変わり、安定的なエネルギー源を供給しますが、乳幼児は1回で食べられる量が少ないので長い時間食べずにいると飢餓状態になり、低血糖になります。

乳幼児期に最も多くみられる低血糖症がケトン性低血糖症で、尿検査でケトン体という物質がたくさん認められます。1歳半から5歳ごろまでに、ケトン性低血糖症がみられます。

原因ははっきりわかっていませんが、比較的やせ形で発育のあまりよくない乳幼児に多くみられ、夕食を食べないで寝たために次の朝一時的に飢餓状態になったり、精神的ストレスや風邪などで食欲不振に陥って飢餓状態になることが、ケトン性低血糖症を発症する切っ掛けになります。

飢餓状態が短時間である場合、血糖値を回復させるため、アドレナリンやグルカゴンなどの興奮にかかわるホルモンが分泌され、肝臓のグリコーゲンを分解しブドウ糖を放出することで血糖値は維持され得ます。しかし、乳幼児は肝臓にグリコーゲンを蓄積する機能が低いにもかかわらず、脳や筋肉での血糖の消費が盛んであるため、飢餓状態になるとグリコーゲンの分解による糖の供給は容易に不足状態に陥りやすくなります。

グリコーゲンの分解による血糖値の維持が限界になると、体は糖新生を行うことで血糖値を維持しようとします。主に糖新生を行う肝臓では、脂肪をβ酸化することによって生成されるエネルギーを利用し、骨格筋由来のアラニン、乳酸、脂肪などを原料にして糖新生を行い、ブドウ糖を供給します。脂肪のβ酸化によってできた余分なアセチルコエー(活性酢酸)は、ケトン体(アセトン体)に変換されます。筋肉、脳、腎臓(じんぞう)などでケトン体は利用されますが、余分なケトン体は血中に増加していきます。

低血糖の度合いにより症状はさまざまですが、軽度の場合は元気がない程度の症状です。ひどくなると、顔面が蒼白(そうはく)になり、嘔吐(おうと)を伴ってけいれんを引き起こすこともあります。

ケトン性低血糖症を発症しても、普通の状態の時には、血糖の異常はありません。知能の遅れはありませんが、身体的な発育が少し遅れたり、体重の増加がよくない乳幼児は多くみられます。

ケトン性低血糖症の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、血糖値の低下、および血中や尿中のケトン体の増加がみられる場合に、ケトン性低血糖症と確定します。鑑別すべき疾患としては、血液中のインスリン値が高い結果起こる低血糖症、内分泌・代謝性疾患が挙げられます。

低血糖の出現時に検査をする機会が得られない場合は、12時間から18時間の絶食検査を行い、低血糖の出現を確認することもあります。ただし、この絶食検査の前には、脂肪のβ酸化を促進するカルニチン、アシルカルニチンが正常であることを確認しておかなければ危険です。

小児科の医師による治療では、軽症の場合、経口で糖分を少量ずつ頻回に与えます。嘔吐などのため経口摂取が困難な場合や、中等症から重症の場合には、20%ブドウ糖液2mg/kgの静脈注射を行い、引き続き5~10%の糖濃度を含むブドウ糖の輸液を血糖値が正常化するまで行います。

ケトン性低血糖症は予後良好な疾患であり、予防に努めていれば、一般に10歳前後には症状が出なくなります。

予防としては、乳幼児に低血糖を起こさないようにするために、常に空腹にならないように食事の回数を増やしたり、炭水化物の多い食事を取らせます。食欲がない時や風邪などを引いて元気がない時には、早めに糖分を与えることが大切です。

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