細菌が感染することで肺の組織が壊れ、うみがたまる疾患
肺膿瘍(のうよう)とは、細菌が感染することで肺の一部が化膿して、組織が壊れて、うみがたまる疾患。普通は、片方の肺のみに発症します。
肺炎にかかった人のうち、抵抗力が弱い人に起こったり、肺炎の原因となった病原菌の種類によっても起こることがあります。組織が壊れた部分は空洞になってしまったり、治っても瘢痕(はんこん)が残ります。
ほとんどの化膿菌によって肺膿瘍が引き起こされますが、最もよくみられる原因菌は、空気のあるところでは増殖しにくいバクテロイデスなどの嫌気性菌。肺炎球菌や黄色ブドウ球菌、緑膿菌などの好気菌も、原因菌になる場合もあります。いくつかの菌が複数合わさって、引き起こすこともあります。
誘因としては、肺内への異物の吸引、上気道の慢性感染、結核やがんによる気道狭窄(きょうさく)、嘔吐(おうと)を繰り返すような消化器の疾患などがあります。
初期症状は寒け、発熱、胸痛、せきなど、肺炎に似ています。1週間ほどたつと、膿性のたんが多量に出るようになり、悪臭を放ったり、時には血が混じることもあります。血を吐くこともあり、大量に吐く場合などは極めて危険です。
これらの症状の現れ方によって、肺膿瘍は急性型と慢性型に分けられています。通常、慢性型は発熱も低く、すべての症状が急性型よりも軽くなります。
肺膿瘍の検査と診断と治療
肺膿瘍の症状に気付いたら、呼吸器疾患専門医のいる病院を受診します。
医師による診断は、胸部X線検査、胸部CT検査、たんの性質検査、血液検査などに基づいて行われます。肺炎の場合と同じように、肺膿瘍では胸部X線やCT検査の写真に明らかな影が認められます。肺炎の多くは熱が下がると影が消えるのに対して、肺膿瘍では解熱しても陰影が残ります。
肺から採取したたんの検査では、化膿菌のほかに膿球や壊死(えし)物質が認められます。血液検査では、白血球の増加と、軽、中度の貧血がみられます。
治療は、化学療法が主体となります。原因菌がペニシリンに耐性のないものであれば、まずペニシリンが用いられます。その後は経過をみながら、必要に応じて、抗生物質が投与されます。
ほとんどの場合、初期は静脈注射による投与を行い、症状が改善して体温が平熱に戻ると、経口投与になります。抗生物質の投与は、症状が消え、胸部X線検査で膿瘍の消失が確認されるまで続けます。体位ドレナージも、膿瘍の排出を促すために行います。
適当な治療が行われれば、肺膿瘍の大部分は改善します。急性の場合の治療期間の目安は、2〜3カ月。慢性の場合は、もう少し長期の治療期間が必要となります。
化学療法の治療効果が思わしくない場合は、抗生物質以外の治療も必要になります。時に、胸壁を通して膿瘍の内部へチューブを挿入し、肺膿瘍を排出させることもあります。肺の一部切除といった外科療法が行われることもあります。
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