生まれてから生じた異常により、脳脊髄液がたまって脳室が拡大する疾患
後天性水頭症(すいとうしょう)とは、生まれてから生じた異常によって、脳脊髄(せきずい)液(髄液)が頭蓋(とうがい)内にたまり、脳の内側で4つに分かれて存在する脳室が正常より大きくなる疾患。
脳脊髄液は、脳全体を覆うように循環して脳保護液として働き、脳を浮かせて頭部が急激に動く衝撃を柔らげたり、部分的な脳の活動によって産生される物質を取り除く働きも併せ持つと考えられています。脳室で血液の成分から産生されて、1日で3回ほど全体が入れ替わる程度のスピードで循環し、最終的には、くも膜という脳の保護膜と脳との間に広がっている静脈洞という部位から吸収され、血液へ戻ってゆきます。
この脳脊髄液の産生、循環、吸収などいずれかの異常によって、脳脊髄液が頭蓋内に余分にたまると、脳を圧迫し、脳機能に影響を与えます。
後天性水頭症は成人でみられることが多く、脳腫瘍(しゅよう)、がん、細菌・ウイルス・寄生虫などの感染で起こる髄膜炎、頭部外傷、脳動脈瘤(りゅう)の破裂や高血圧が原因で起こる脳内出血、脳室内出血、脳室内腫瘍などの原因となる疾患に合併して、頭蓋内の内圧が上昇し、年齢を問わず起こります。
余分な脳脊髄液による頭蓋内の内圧の上昇は、脳を直接圧迫する力となり、激しい頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)、意識障害を引き起こします。急激に症状が悪化する場合もあるため、早急な処置が必要となります。
一方、後天性水頭症には、50歳代以降の人に多くみられ、頭蓋内の圧力が上がった症状を示さない正常圧水頭症があります。脳室が大きくなっていて、認知障害、歩行障害、尿失禁といった特徴的な症状がありながらも、頭蓋内の圧力は高くなりません。くも膜下出血後や髄膜炎の治った後に認められることが多く、原因不明の特発性のものもあります。
後天性水頭症の検査と診断と治療
内科、脳外科、脳神経外科の医師による診断では、頭部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査を行います。これらの検査で多くの場合、脳室の拡大の有無、原因となっている疾患の有無がわかります。
内科、脳外科、脳神経外科の医師による治療では、脳腫瘍、脳内出血、髄膜炎など原因となっている疾患があり、脳室内の脳脊髄液の流れを障害していれば、外科的治療で除去します。
水頭症そのものに対する治療としては、一時的な緊急避難的な治療と、永続的な治療が行われます。
一時的な治療では、ドレナージと呼ばれる方法が一般的で、余分な脳脊髄液の一部分を頭蓋骨の外へ流す処置の総称です。頭蓋内の圧力が急上昇した状態による病状の不安定さを解除するために、救急処置として行われます。
永続的な治療では、シャントと呼ばれる手術法が一般的で、年齢、原因を問わず行われています。本来の脳脊髄液の流れの一部分から、シリコンでできたシャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、頭以外の腹腔(ふくこう)や心房などへ脳脊髄液を半永久的に流す仕組みを作ります。
シャント手術をすると、正常圧水頭症で示している認知障害が改善することもあります。
内視鏡手術も行われています。神経内視鏡を用いて、脳の内部に本来ある脳脊髄液の流れ方の経路とは別に、新しい経路を作ります。治療できる年齢や原因に制約があり、シャント手術に取り換わる治療法にはいまだ至っていません。
後天性水頭症の治療を受けた人は、定期的な医師の診察を受けることが必要です。疾患の管理が良好であれば、通常の生活を送ることが可能です。
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