隣り合った手指が互いに癒合している先天異常
合指(ごうし)症とは、隣り合った手指が互いにくっ付いている、すなわち癒合している先天異常。中指と薬指間などにみられます。
胎児においては、手のひらの基になる組織で、一枚の板状をした手掌原基(しゅしょうげんき)の一部が自然死(アポトーシス)し、裂け目が生じることによって、独立した指が形成されます。こうした変化は胎生の14~16週ごろに起こりますが、その分化(分離)が不十分な場合に合指が生じます。
合指間で共有する組織の種類により、皮膚性合指、繊維性合指、骨性合指に分類されます。皮膚性合指では、皮膚のみの共有で、隣り合った手指はそれぞれ独立した骨、靭帯(じんたい)を有しています。線維性合指では、腱(けん)や靭帯が癒合しており、良好な機能回復を得るにはそれらの分離が必要です。
骨性合指では、骨や関節が共有されています。このタイプの合指症では、隣り合った手指それぞれの成分の大きさが小さいことが多く、2指の分離を行うといずれかの手指が小さくなりやすい傾向があります。このため、大きさの矯正のために複数回の手術が必要とされることもあります。
癒合範囲については、指全体にわたって癒合している場合と、先端は分離している場合とがあります。手指の数が6本以上となる多指(たし)に合併した多合指(たごうし)の場合もあります。
出生1000人から3000人に対し1人の頻度で、合指症はみられます。多くは偶発的、単発的に生じていますが、アペール症候群(尖頭〔せんとう〕合指症候群)、ポーランド症候群などの先天奇形症候群の症状の一部としてみられることもあります。
生後すぐ、合指症は産科で気付かれることが多いため、手指以外の体の異常が合併していないかどうか、小児科でも診てもらうことが勧められます。また、整形外科などでも診てもらい、美容的、機能的な観点から手術を行うべきかどうか相談することが勧められます。
合指症の検査と診断と治療
整形外科、ないし形成外科、手の外科の医師による診断では、視診で容易に判断できますが、骨の状態をみるためにX線(レントゲン)検査を行います。
整形外科、ないし形成外科、手の外科の医師による治療では、手術により、隣り合った手指の癒合部の分離を行い、指間の水かき部分を皮弁(ひべん)と呼ぶ弁状に起こした皮膚で形成します。
手指が離れると皮膚が欠損するため、ほとんどの場合、足のくるぶし付近などの皮膚を採取して、手指の側面に植皮します。
単純な皮膚性合指では、1~2歳で分離手術を行います。骨性合指、3指以上の合指などでは、技術的に難しい場合があり、2段階に分けた手術や骨切り術、骨移植術を必要とすることもあります。
手術後は安静を保つために、手と指をギプス固定します。皮膚性合指で手指間に植皮を行った場合には、原則としてギプス固定は1週間で解除し、リハビリを開始します。
繊維性合指で腱移行を行った場合や、骨性合指で関節形成を行った場合には、2~3週間のギプス固定を行います。また、皮膚の欠損の範囲が大きく、手術後に手指のひきつれ(拘縮)が起こる可能性が高い場合には、ギプス固定などを6カ月程度継続します。
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