膝の内側と外側にあって、関節の横ぶれを防いでいる側副靱帯が損傷、断裂した状態
側副靱帯(そくふくじんたい)損傷とは、膝(ひざ)の内側と外側にあって、関節の横ぶれを防ぐ役目をしている側副靱帯が損傷、断裂した状態。
側副靱帯はすじ状の繊維性結合組織で、大腿骨と下腿骨の脛骨(けいこつ)および腓骨(ひこつ)とを連結しています。
スキーやサッカーなどのスポーツで急激な反転、方向転換をした時に、下腿が無理に内側や外側へ曲げられて起こります。この側副靱帯の損傷は、内側に多く、外側の受傷は比較的まれです。
損傷を受けると、階段を降りる時や歩行などの時に膝がグラグラして、安定しなくなります。断裂すると、断裂部の圧痛と腫脹(しゅちょう)、膝を軽く屈曲した位置で側方へ動揺する不安定性をみます。
整形外科医の診断では、膝の不安定性を検査します。この場合、麻酔下で、痛みのために起こる筋肉の防御的緊張を取り除いた状態で行うと、はっきりします。不安定性の程度によって、痛みのみで不安定性はない1度、膝を伸ばした状態、伸展位で不安定性はないが、30度ほど屈曲すると認められる2度、伸展位で不安定性を認める3度に分類されています。
側副靱帯単独の損傷のことが多いのですが、3度の不安定性がある場合は、前十字靭帯損傷を合併している可能性があります。そのほか、X線撮影、関節造影、MRI、関節鏡などの所見を総合的に判断して、診断します。
内側の側副靱帯の損傷の場合、損傷の程度により2週間から4週間、弾性包帯、ギプス、固定装具による安静固定を行います。痛みや炎症の強い時期は、冷湿布などで冷やします。
内側の側副靱帯の単独損傷では、しっかりした固定とリハビリによって、回復することも多くみられます。しかし、しっかりした固定をしないと、痛めた靱帯が伸びた状態で修復され、膝関節が不安定な状態となり、痛みや腫(は)れも慢性化するケースがあります。慢性化した場合は、サポーターなどによる固定をしたり大腿四頭筋の強化訓練をして、膝関節がグラグラしないように安定させる必要があります。
また、完全に靱帯が断裂している重症のケースでは、膝関節の不安定性が大きくなるために手術を要することもあり、靱帯縫合術、靱帯再建術を行います。前十字靱帯の損傷と合併している場合も、その不安定性が大きく、スポーツや重作業に復帰するには手術をしたほうが予後も良好のようです。
外側の側副靱帯の損傷の場合も、損傷の程度により2週間から4週間、ギプスなどによる安静固定を行います。炎症や痛みの強い時期は、冷湿布などで冷やします。
スポーツや事故による損傷では、外側の側副靱帯の単独損傷を発生するケースはほとんどみられず、十字靱帯損傷や、膝裏の筋肉である膝窩(しっか)筋損傷、膝関節の中の軟骨である半月板損傷に合併して生ずることが多いため、固定期間や安静期間は、専門医の判断に委ねるべきです。
単独損傷では、後遺症として関節の不安定性が起こる場合は少なく、また不安定性を起こしても内側の側副靱帯と比較して、その動揺の程度は小さく回復も良好ですが、複合靱帯損傷では、多くが強固な靭帯修復術が必要になります。
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