新型コロナウイルスに感染した子供のうち、全国で少なくとも64人が感染から数週間後に心臓の働きなどが悪くなる「小児多系統炎症性症候群(MIS−C=ミスシー)」と診断されていたことが自治医科大学附属病院などの調査でわかりました。
小児多系統炎症性症候群は新型コロナに感染した子供にまれにみられ、感染の2週間から6週間後に心臓など複数の臓器の働きが悪くなるなどして、ヨーロッパやアメリカでは死亡するケースも報告されています。
これについて、自治医科大学附属病院の小児科医のグループなどが全国の約2000の医療機関を対象に、今年の夏から行った調査の結果がまとまりました。
それによりますと、国内ではこれまでに子供が死亡したケースはないものの、「小児多系統炎症性症候群」と診断された子供は全国で少なくとも64人に上ることがわかったということです。
調査を行った自治医科大学附属病院小児科の松原大輔医師は「新型コロナの感染拡大がこのまま続くと、『小児多系統炎症性症候群』も少しずつ増える可能性がある」と話しています。
アメリカの疾病対策センター(CDC)によりますと、「小児多系統炎症性症候群(MIS−C=ミスシー)」は新型コロナウイルスに感染した子供などにみられ、心臓や肺、消化器系統など複数の臓器に炎症が起きることが知られています。
症状は発熱のほか、腹痛、目の充血、下痢やおう吐などで、重症化すると心臓の働きが低下し、死亡するケースもあるとしています。
アメリカでは一昨年から今年10月末までに9073人が「小児多系統炎症性症候群」と診断され、このうち74人が死亡しているということです。
日本小児科学会などによりますと、これまでに国内での死亡例はないものの、今年に入り子供の感染が増えてからは、各地の医療機関で「小児多系統炎症性症候群」と診断される症例が目立つようになったということです。
このため新型コロナに感染した子供の体調に異変が起きた際は「小児多系統炎症性症候群」かどうか、早期に診断した上で、専門的な治療を始められるかが重要になります。
栃木県内に住む当時11歳の男の子は新型コロナウイルスに感染してから約1カ月後に「小児多系統炎症性症候群」と診断されました。
男の子の父親によりますと、当初、原因不明の高熱やおう吐、目の痛みなどを訴えたため、小児科や眼科などを受診したものの原因がわからず、その後、大学病院で専門医から「小児多系統炎症性症候群」と診断されました。
男の子は一時は心臓の働きも悪くなったということですが、入院して治療を受けて回復し、経過観察になっているということです。
全国的に新型コロナウイルスが急拡大して第8波に入ったとされ、感染者が増える中、小児多系統炎症性症候群は注目される「子供の病気」です。
2022年11月17日(木)
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