厚生労働省は22日、塩野義製薬(大阪市中央区)が開発した新型コロナウイルスの飲み薬を緊急承認しました。緊急承認は、感染症流行時などに迅速に審査する制度で、今回が初めての適用。発熱などの症状を1日早く改善させる効果があるとされます。軽症者にも使える初の国産の飲み薬となり、安定供給が期待されます。12月初めに医療機関に届けます。
この薬は「ゾコーバ(一般名・エンシトレルビル)」。発症3日以内に飲めばウイルスの増殖を妨げる作用があるとされます。対象は12歳以上の軽症や中等症患者で、重症化リスクの有無は問いません。12歳未満の小児、妊婦や妊娠の可能性がある女性は使えません。1日1回、5日間服用します。新型コロナ感染症の医療費は公費のため、当面、患者の自己負担はありません。
緊急承認は、感染症流行やバイオテロの発生などの緊急時に、迅速に審査して承認するもので、今年5月、医薬品医療機器法を改正して設けられました。安全性はこれまで通り確認する一方で、有効性は「推定」できればよく、通常は数千から数万人の臨床試験(治験)の規模を小さくできる可能性があります。また、感染状況などの社会的な必要性も考慮されます。
塩野義製薬は2月に別の審査制度を希望して申請していましたが、改正法の成立後に緊急承認の申請に切り替え、6月と7月に開かれた専門家による審議を受けました。
しかし、約400人分の治験のデータは、ウイルス量を減らす効果はみられたものの、疲労感や発熱などの12症状の総合的な改善効果は明確ではありませんでした。このため継続審議となりました。
塩野義製薬は審議後も治験を続けており、9月に新たな結果を公表。約1800人の治験で、オミクロン型に特徴的な鼻水、のどの痛み、せき、発熱、倦怠(けんたい)感の5症状が改善する時間を7日程度にし、24時間短くする効果があると公表しました。一方、重症化を防ぐ効果は確認されていない。
この日の審議会では、新たなデータを踏まえ、賛成多数で有効性が推定できると判断しました。ただし、承認期限を1年とし、追加解析や市販後のデータの提出なども要求しており、1年以内に効果を確認できなければ承認は取り消されます。委員1人は承認に反対しました。
厚労省は承認後にゾコーバを100万人分購入する契約を結んでいます。国内で新型コロナの軽症者にも使える飲み薬は、ほかにアメリカのメルク社の「ラゲブリオ(一般名・モルヌピラビル)」とアメリカのファイザー社の「パキロビッドパック(一般名・リトナビル/ニルマトレルビル)」があります。
2022年11月22日(火)
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