体の外で人工的に髪の毛を作り出すことに、マウスの実験で成功したと、横浜国立大学の研究チームが発表しました。毛をマウスに移植すると、定着して生えかわるのも確認できたということで、脱毛症などの治療につながるのではないかと期待されています。
研究は横浜国立大学の福田淳二教授(再生医療)らの研究チームが行い、論文を10月21日付のアメリカの科学雑誌「サイエンス・アドバンシズ」に発表しました。
研究チームは、黒い毛が生えるマウスの胎児の皮膚から表面の部分になる細胞と、体の組織を支える部分になる細胞を取り出し、これらの細胞をつなぐ役割を担うたんぱく質などを低い濃度で混ぜて培養しました。
すると2日後には、表面になる細胞を支える部分になる細胞が囲むようになり、培養を始めてから10日後には「毛包」と呼ばれる髪の毛を作り出す部分を含んだ毛が生えてきたということです。
さらに、5ミリほどにまで伸びた毛をマウスの皮膚に移植すると定着し、その後、いったん抜けたものの、3週間ほどたつと新たな毛に生えかわったということです。
毛包を含む一定の長さがある毛を、ほぼ100%の精度で人工的に作ることに成功したのは初めてだということで、脱毛症の治療法の開発につながるのではないかとしています。
福田教授は「植毛のように移植できるので、人の細胞で作ることができたら画期的な治療法になる。髪の毛ができる様子も再現でき、白髪が生えるメカニズムの解明にも応用できる」と話しています。
ただし、現段階ではマウスのように人の皮膚細胞から毛包を培養し、髪の毛を生やすことはできておらず、実用化の見通しも立っていません。人への応用に向けては、課題がいろいろあるといいます。
福田教授によると、毛髪の再生技術を巡っては、アメリカの研究チームが人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って毛髪の生えた皮膚を人工的に培養してから、マウスへ移植するのに成功しました。しかし、人への移植は安全性や費用の面での課題があり、医療現場での活用は難しいとみられているといいます。
理化学研究所と再生医療のベンチャー企業は2018年、毛包を繰り返し再生させる細胞を大量に作る技術を開発。人の頭部に移植することで毛髪を再生させようとする臨床研究の実施を目指していたものの、新型コロナウイルスの感染拡大などが影響して中断しています。
2022年11月3日(木)
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